Love*4-34 ページ34
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「私はこのままが良い、このままでいい。」
「…」
「このまま6人でいて、このまま2人で静かに暮らせていたらそれでいい」
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だから、結婚しよう、なんて言わないで。
そんなことになったら、きっと私は5人と一緒にいられないし、色んな事が今までより制限される。
私が望む、些細な幸せが崩れてしまう。
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「…分かって、くれる？」
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彼が結婚したい理由が、家族が欲しいとか、子どもが欲しいとか、そういうものなのだとしたら、
私は残念だけど、答えてあげられない。
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他の彼女を、探してもらうしかない。
今すぐ、なんて考えたこともなかった。
普通の幸せ、が自分の手元に落ちてくるなんて、ハナからそんなこと、信じていない。
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私は、"家族"に対してそれほど憧れを抱いていないし、
いつだって思い出すのは、苦労ばかりして、死んでいった母親のことで。
そして次に、彼女の人生を壊した、父親のことが浮かんでくる。
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私とは対称的に、彼は幸せな家庭で育った。
母親も父親も、彼の活躍を見守って、楽しみにしてくれていて、暖かく、優しい家庭。
私が、感じることのなかった温もり。…世界が、ちがう。
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「…Aは、消えていきそうで怖い」
「え？」
「今まで、俺たちにしか心開いてなかったのに、いつの間にかどんどん世界を広げて」
「…」
「俺たちが望んだことなのに、嬉しいはずなのに、すげえ怖い」
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ぽつり、ぽつり、と零れてくる彼の言葉は、
喉の奥から絞り出したような苦しそうな声で。
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ああ、どうして、こんな風になるまで、私たちは、
お互いに何も言わなかったんだろう。
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「きっと、すぐいなくなるんだろうな、って思う」
「……」
「知らなかった外の世界の方が、きっとAにとって魅力的なんだろうな、って」
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それは、きっと私があんなに苦しい思いをしたのに、
クイーン・マリーの再演を受けると譲らなかったことに対してだ。
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「そしたらきっと、俺のことなんてどうも思わないくらい、
Aにとって良い人が現れて、横から掻っ攫われる気がする」
「そんな、」
「だから、誰にも取られないように、攫われないように、結婚したい」
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はやく俺のものにしたい、と呟いて、彼は私のことを抱きしめた。
いつかなんていらない、信用できない、と言う彼に、心が潰れそうになる。
あなたのため、があなたを苦しめているなんて、そんなこと、これっぽっちも思わなかった。
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