Love*4-29 ページ29
(翔side)
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撮影を終えてマンションに向かうバンの中で、
俺を担当するマネージャーが、
不意に思い出したように口を開いた。
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「あ、そういえば工藤さん再演の話受けたみたいですね」
「…再演？」
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全く知りもしなかった話で、
なんのことだ、と首を傾げたら、
あれ、聞いてませんか？と言われた。
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「いや…知らない、」
「ミュージカルの評判が良かったみたいで再演が決まったって話でしたよ」
「…へえ、」
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チーフが珍しく困ってました、工藤さんが話受けてくれるか、って
と続く言葉に、Aは乗り気じゃなかったのか、と想像する。
…まあ、稽古の時から辛そうではあったし、
もう一度、と言われたときに戸惑ったりしたんだろう。
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「事務所としては色々用意したらしいんですけど、
結構簡単に受けてくれた、って安心してましたよ」
「…」
「てっきり櫻井さんが援護したのかと思ってました」
「…してないよ、」
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相談すらされなかったし、という言葉は
寸前で飲み込んだ。
簡単に、ということは戸惑う様子もなかった、ってことか。
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Aに再び声が掛かった、ということは
メインのキャストは変わらないんだろう、
と言うことは、彼女と噂が立った彼もいる、ということで。
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ああ、厄介だ、と思う。
信じてるのに、何もないと分かっているのに
ふつふつと心の奥から湧いて出てくる
黒い感情が、ものすごく、厄介だ。
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なんで、喜んでやれないんだろう。
あれだけ必死に稽古していたAを、
俺は間近で見ていたのに、
その努力が実を結んで、再演が決まったことを
どうして嬉しいと思ってやれないんだろう。
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"彼"とまた、
役とはいえ"恋人関係"になることを選んだAのそれが
"裏切り"だと、心のどこかで思ってしまっている自分を軽蔑する。
…ありえない、馬鹿だろ、こんな。
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両極端の思考が混在して、
もうどうしていいか分からない。
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勢いのまま、支離滅裂なことばかり口走る俺を見て、
彼女がひどく傷ついたような顔をする。
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ああ、もう、限界だ。
このまま、誰のものにもならず、
ここにいてくれたらいいのに。
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