浦島坂田船でただただ妄想を膨らませるやつ【短編集】 (ページ31)

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嫉妬①【センラ】ページ31

家に帰ると「おかえりー！！」といつも言ってくるはずのセンラくんが今日は来ない。

靴もあるし、出かけるなんて言ってなかった。
なんかしてるのかな。そんな軽い気持ちだった。

ガチャッ

リビングのドアを開けるとテレビもつけずスマホも触らずただソファーに座って何もしていないセンラくんがいた。

『ただいま』

「…」

流石に気づいてるよね。
荷物をテーブルの上においてセンラくんの元へ移動した。

『センラくん！』

「ここ座って」

おかえりも言わないでただ横に座れと指示をしてくるセンラくん。

『なに？』

とりあえず言われるがまま横に座った。

「おかえり。それで、今日は誰とどこへ行ってたんですか。」

『〇〇ちゃんと…お昼を食べに…』

「じゃあ横歩いてた男は〇〇ちゃんってこと？」

あ、バレてるじゃん。

『……』

「黙ってるってことは男と遊びに行ってましたってことでいいん？」

『……』

「いいわ」

センラくんは急に立ち上がってスマホと財布だけを持って玄関へ、そのまま出ていく気だ。

『ま、まって！！センラくん！！』

私が呼んでも振り向かず廊下をズカズカ歩いていく。

『ねえ！！センラくん！！』

「浮気ってことやろ？俺以外の男見るとはいい度胸やな」

そう言い放って出ていってしまった。
これは家で泣いてる場合じゃない。追いかけないと。本当のことを話さないと。

私は何も持たずただセンラくんのあとを追いかけた。

ただセンラくんの後ろ姿を追いかけた。
センラくんは家から離れた公園の近くで止まった。
『はぁ、はぁ、っはぁ、センラくん！！！』

センラくんは振り向かない。

『ごめっ、なさいっ…』

「…」

センラくんのすぐ後ろにいるのに距離はすごく離れている気がする。

『浮気とか、じゃ、なくて…っ、はぁ、プレゼン、トっ、買いに行きたくて…』

走ったせいで息が乱れて、自分が何を言ってるかわからない。

『それで、でも、センラくん…何がほしいかわかんない…から…』

「…それで嘘ついて出かけてたと。」

『そう…です…ごめんな、さい…』

「ごめん」

センラくんは一言そう言って私を抱き上げ、そのまま家に向かって歩き始めた。

『ちょ、っと！！離して！！恥ずかしい！』

「おっきい声出したらあかんやろ。シー」

『でも、…！！』

街の人がチラチラ私達を見る中家まで抱きあげられたままだった。