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ㅤ家のすぐそこまで2人に送ってもらい、「また明日」と別れて同棲しているマンションに着いた。
帰ってるかな、真冬。
ドアノブを回すと、行く時にはなかった下駄が玄関にあった。
ああ、今日は、これを履いていったんだ。
「……ただいま」
「おかえりー」
私がドアを開けた音とただいま、という声が聞こえたらしく、リビングへと繋がるドアからひょこっと顔を出した真冬。
そちらに歩いていって羽織っていたコートを脱いだ。
「どこいってたの?」
「カラオケ」
「僕も誘ってくれればよかったのに」
ぷくうっと頬を膨らませて怒ってますよアピールをする真冬。いつもの事だけれどとにかくあざとい。
取り敢えずいつもするように頬に両手を当ててぶふーっと空気を出した。
「知らない人いたけどそれでもきた?」
「うっ……わかんない。るすくんとじゃなかったの?」
「るすともう一人いた」
「るすくんか雨と関わってて僕とは関わってない人?んーー?」
「わっかんない。誰?」
諦めたな。
「言ってもわかんないよ。歌い手だけど歌い手関連で仲良くなった子じゃないし」
嘘は言ってない。
もうこうなってしまった以上は
“歌い手の雨とさとみは姉弟”
ということは隠し通さなければいけない。
「それじゃあわかんないじゃん」
けらけら笑いながら、座り心地が悪かったのかソファーに座り直す真冬。
それを片目に、私は息をするように嘘を吐いた。
「ん、まぁね。あ、作業するから籠る」
「ごめんけど夜ご飯は食べに行くか、作るかして。多分レトルトカレーとかもあるよ」
「無理はしないでね」
「お互い様にね。おやすみ」
「おやすみ」
自室に入り、ドアを閉める。
電気もついてない暗闇の部屋の中に1人、うずくまった。
どうして。
「無理しないで」なんて心配してくれるの。
朝、あんな浮気をしているような雰囲気を出していたのに。
なんなら知らない人と私で二人きりの可能性だってあるのに。
そこまで考えて、またも少しずつ酷くなっていく頭痛。
それでもどうやら靄がかかる眠気の方が強いらしい。
そのまま身を任せ、まどろみの世界へとゆっくり、ゆっくり意識を落としていった。
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野良神 - 凄いですね。面白いです!更新頑張ってください! (2018年11月6日 18時) (レス) id: d6c3f54fc0 (このIDを非表示/違反報告)
桜瀬さわ@“自称”大天使さわさァん(プロフ) - あいらさん» ありがとうございます;;最近更新疎かになってるのにコメント貰えてとてもびっくりしてます!(一時期消すことも考えてました)その言葉でもうちょっと頑張る気が起きました!諸事情で次回の更新まで時間がかかるかもしれませんが続編に向かい頑張ります。 (2018年9月10日 19時) (レス) id: c9f142c710 (このIDを非表示/違反報告)
あいら - 初コメ失礼致します! 僕シリアス大好きでして…この作品大好きです!描写もとても好きです これからも頑張ってください! (2018年9月10日 13時) (レス) id: 556c8a168b (このIDを非表示/違反報告)
桜瀬さわ@“自称”大天使さわさァん(プロフ) - りょうかさん» この作品、描写に力をいれてるのでとてもとても嬉しいです!ありがとうございます! (2018年1月8日 10時) (レス) id: c9f142c710 (このIDを非表示/違反報告)
りょうか - すごく描写がきれいに書けていて、すごいなと思いました!更新頑張ってください! (2018年1月7日 6時) (レス) id: a812e7560b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜瀬さわ | 作成日時:2017年9月9日 9時