■ミッドナイトブルー(2) ページ11
「めいちゃん上手すぎ〜…。」
「Aが弱すぎんだって。」
負けず嫌いのAにプラスで何ゲームか挑まれたものの、結局勝ち越して店を出る。帰路につくと空も白んでいて、夜というよりはほぼ朝だった。
「踊りとゲーム以外はセンスあるよねえ。」
…なにか余計な一言が聞こえた気がしたけど、隣で上機嫌にスキップするAに免じて許します。
今日は夜の街を歩く、というのもあってかAの服装はいつもより露出が高い。髪もおろしていてずいぶん大人っぽく見えた。
俺としてはあんまり肌を見せてほしくないんだけど、『デート楽しみで張り切っちゃった』なんて言われたらもうどうしようもないじゃんか。ねえ?
「めいちゃん危ない!!」
「え゙!?」
横断歩道を渡る最中、鬼気迫る勢いで叫ぶAの指さす方向へ目を遣る。
…が、トラックがすごい速さで近づいてきてるとか、そういうのは特になく。
「何?Aには何が見えてんの?」
「あ!めいちゃんまた!」
「エェ!?こわぁい!」
よくよく見れば、人差し指は白線を指していて。
「白いとこ以外通ったらサメに食べられんだよ。」
そこそこ高いヒールをものともせず、軽い足取りで向かいの歩道へジャンプした。
「うーわ、懐かし!」
「小学生あるあるじゃない?」
「あるあるだねぇ。」
「小石キープして蹴りながら帰るとかね。」
ほろ酔いのAはいつもより距離が近くて、ふわりと漂うアルコールと香水に、醒めてきたはずの酔いが戻ってきそうになる。
「なんか今日、かわいーね。」
隣を覗き込むように少しかがむ。
開かれたまぶたに乗ったラメがきらきらと街灯を反射させて綺麗だ。
そうして絡む視線のまま、あいた右手をすくい上げる。固まった表情が愛おしく思えてたまらない。
「…アイシャドウ変えたから?」
「あー確かに言われたら違うかも!どこの?」
「トムフォード。」
「わっかんな。」
みるみる赤くなる耳に、ピンクゴールドのピアスはよく映えていた。
「ねー照れてる?照れてんじゃん!」
「うるさいよ!見ないで!」
「かあわい〜マジで!」
「お酒のせいだもん!」
顔を隠すように早足で歩くけど、そもそもの歩幅が違うのですぐ追いついてしまう。アルコールが回ったせいだと言い張るAを捕まえて問い詰めるべく、小さな背中を追いかけた。
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作者名:哀 | 作成日時:2022年8月29日 23時