【歌い手】FANCY:YOU!!【めいちゃん】

□3 ページ5

｢むくみヤバ。｣
起きたてだから当たり前なんだけど。
昨日のお隣さんの件は、あれからずっと気を使ってくれていたのか騒音で再び目覚めることはなかった。勇気出して言ってみるもんだなー。

起床時間もアラームのアーティストもいつもと変わらないのになんだか気分がいい。ので、ホコリを被りつつある新作コスメの封を切って前からしてみたかったアイメイクにチャレンジしてみたり。
顔面に凝ったからか、どう見ても夏仕様ではないこのシャツが余計浮いて見えてくる。衣替え…面倒くさくない？

アイシャドウが違うだけなのに、なんて晴れやかな気分なんだろう…！次の休みまで頑張るぞ！


｢…あ。｣
｢…あ。｣

勢いよく開け放った扉とほぼ同時にお隣の扉も開いた。
出ていらしたのは、ふわふわ茶髪と垂れたまなじりが愛らしい、いやなんか…でかいね？全体的に。

昨日の今日でかなり気まずいけど、この人がお隣さんとは限らないし…！

｢おはようございます！昨日はすいません！｣
あ、確定でお隣さんだわ。声がそうだもん。

｢おはようございます。こちらこそ水を差しちゃって…。｣
｢もうそんなそんな！朝早いんですね？｣

エントランスまで無言、というわけにもいかないのでポツポツと世間話をする。昨日はああ言ってくれたけど実のところめっちゃ恨まれてたらどうしよう、という不安と恐怖は、無事杞憂に終わったらしい。

｢仕事ですからね。そちらこそ…仕事じゃ、ないですよね…？｣
｢あー、買い出しです。みんな潰れちゃったんで。｣
髪の色とか話してる内容とかで、なんとなく自営業の方なのかな？とか余計なことを考える。
それにしても羨ましいな、休みを合わせて潰れるまで宅飲みできる友人って…もう親友じゃん？

ゴミ出しのチェックがやけに厳しいとか、エレベーター着くの遅いよねとか他愛のないやり取りをしていたらあっという間にエントランスに到着。
お隣さんはコンビニへ、私は最寄り駅へ。道が真反対なのでここでお別れ。


｢あっそうだ！｣
あまりの声量に言いかけた『じゃあ、』も引っ込んだ。
朝から元気だな。そういえばオールしてるんだったわ、この人。

｢俺、中村めいです。改めてよろしく！｣
めっちゃ陽キャじゃん。

｢…柊A、です。こちらこそよろしくね。｣
お互い自己紹介をして今度こそバイバイする。
卒業してからずっと仕事仕事だったから、なんかドキドキしてる。この胸の高鳴りと冷や汗は…うん、普通に体調不良！最悪！

■4→←□2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す