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カラフルなLEDに照らされて薄暗がりにぼんやり沈んだAは、はっと息を飲むほど綺麗だった。
目線を下ろせば見えるつむじとか、プカプカ漂うクラゲを反射させた丸っこい目とか、後れ毛を耳にかける仕草とか。
普段の距離感では意識の行き届かないようなAの雰囲気に目が離せなくなってしまう。
「めいちゃんの推しクラゲはどれ?」
狭い水槽を2人で覗くために触れ合う肩も、きっと気にしているのは俺だけなんだろうな。そう分かっていたから、それにはまだ名前をつけないでおいたのに。
「はぐれないように繋いでるの。」
じっとガラスを見つめたままおもむろに手を取られる。
けどさっきと違ってその目に映っていたのは間違いなく俺だった。
Aから握られた手は水族館を出ても繋がれたままで、その事実がよりいっそう愛おしい。
「見て!」
「どーしたの。」
「猫いるよ!」
一拍口をつぐんだかと思えば、次の瞬間にはグイグイと力いっぱい引っ張られた。そーれはもう、そんな細い腕のどこからそんな力が出るんだってくらいの強さで。さっきまでのトキメキ返して欲しんだけど?
にゃあと愛らしくひと鳴きして足元に擦り寄ってきた毛玉くん。地域猫なのか飼い猫なのか、びっくりするくらい人慣れした猫はしっぽをピンと立ててAにされるがままになっている。
「めいちゃん家にも猫ちゃんいたよね。」
「うん、いるよ。」
「いいなぁ〜!私も猫飼おうかな。」
「今度撫でにくればいいじゃん。」
マジ!?いいの!?なんて目をきらきらさせて言うAに一抹の不安を覚えるのは、ごく自然なことだと思う。この子、誰にでもこうなの?警戒心0すぎるんだけど。めいちゃんはとっても心配です!
意識が逸れたのが気に食わなかったのか、エビフライみたいにぶっといしっぽで更なる撫でを催促してくる。かわいいなこんにゃろ。毛がボサボサになるまで2人がかりで撫で尽くしてやる!
「んー、可愛い!」
すっかりめろめろのAは、まろい頬をゆるゆるにして四足歩行の毛玉を一心不乱に撫で回している。
「うん、かわいーね。」
どっちに言ったのか自分でも分からないけど。
とくに気にした様子もないので、遠慮なく特等席で横顔を見させてもらうことにした。
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哀(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» コメントとお祝いの言葉ありがとうございます!お褒めの言葉もとても嬉しいです…!番外編の方もがんばりますので、ぜひよろしくお願いします! (2022年8月27日 10時) (レス) id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵なお話にドキドキワクワクしまくりました!ぜひまた🐏ちゃんの小説をお願いします!!!Twitterもこれからも楽しく拝見させていただきます!本当にお疲れ様でした!!! (2022年8月26日 19時) (レス) id: 3c19ec381c (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - 涼風さん» コメントありがとうございます!あれって地域差によるものだったんですね…笑これからも自分のペースで頑張ります! (2022年8月11日 18時) (レス) @page30 id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
涼風(プロフ) - ゴミステーションでもしや住んでる地域一緒なのでは…!?と思ってしまいました笑笑内容もとても面白いので、これからも更新楽しみにしています!!!!無理なく頑張ってください😚♡ (2022年8月11日 0時) (レス) @page28 id: d41656e1e9 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» コメントありがとうございます!少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。更新も自分ペースでボチボチ頑張ります! (2022年8月7日 20時) (レス) @page23 id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:哀 | 作成日時:2022年7月23日 10時