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「ウチの会社拘束時間めっちゃ長くてやんなる…。」
「朝も早いし帰りも遅いもんね〜。」
最初は愚痴や真面目な相談に乗ったり乗ってもらったりしていたはずだけど。
「ね、A知ってる?叩いた机を手がすりぬける確率って宇宙が誕生する確率と同じらしい。」
「…可能性は0じゃないってこと?」
アルコールが体中に行き渡るころには偏差値2くらいしかないアホアホな会話が大半を占めていた。ちなみにサボテンのIQは2〜3。
それからしばらく、時間も時間だしお互い明日から仕事ということで解散という運びとなる。
「あれ、伝票…。」
ん〜?とニヤニヤするめいちゃんがたいへん洒落臭い。
ここまでできた男だともう言うことなさすぎて悪態をつくしかなくなってしまう。もちろん感謝の言葉は伝えたけど。
「めいちゃん、送ってくよ。」
「いやそれ俺のセリフだし、家となりだし。」
「そうだっけ?」
「そーうだよ!」
そっか、お隣さんだからここでバイバイじゃないんだ。友だちとご飯に行った帰りはたいていお店の前で解散だから、寂しくない帰り道は久しぶりだ。
「ねー見てめっちゃ虫集ってる。」
「ホントだ〜。カブトムシいる?」
「わかんない。見てくれば?」
あ、ホントに見に行った。『ヤバい蛾に襲われてる!』だって。めっちゃ馬鹿じゃん。写真撮っとこ。
「ちょっと!私のバッグにセミついてる!」
「え?違うよこれブローチだから。」
閑散とした住宅街をぎゃあぎゃあはしゃいで歩いていれば、あっという間に見慣れたマンション。
「今日はありがとう。楽しかった。」
荷物を受け取って、今度こそバイバイだ。
「ほんとぉ?よかった〜!」
「うん、また行こうね。」
ドアノブに手をかけて、最後にめいちゃんを振り返る。
「…それは、期待していいの?」
夜をバックに話すめいちゃんの顔には影がさしていて、表情はよく分からなかった。
何に。次のデートにか、それとも。それを聞くほど野暮じゃない。
「…うん。いいのかも。」
じゃあ、おやすみ。
それだけ告げて、いそいそと部屋の中に退散する。今閉めたばかりの扉を背に、ズルズルと体が床へ沈んで行った。
こんな気持ちは久しぶりだ。頬の熱をどうにかしたくて手を遣るけれど、とても冷める気配はない。
願わくば、これが勘違いじゃありませんように。同じ気持ちでありますように。
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哀(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» コメントとお祝いの言葉ありがとうございます!お褒めの言葉もとても嬉しいです…!番外編の方もがんばりますので、ぜひよろしくお願いします! (2022年8月27日 10時) (レス) id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵なお話にドキドキワクワクしまくりました!ぜひまた🐏ちゃんの小説をお願いします!!!Twitterもこれからも楽しく拝見させていただきます!本当にお疲れ様でした!!! (2022年8月26日 19時) (レス) id: 3c19ec381c (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - 涼風さん» コメントありがとうございます!あれって地域差によるものだったんですね…笑これからも自分のペースで頑張ります! (2022年8月11日 18時) (レス) @page30 id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
涼風(プロフ) - ゴミステーションでもしや住んでる地域一緒なのでは…!?と思ってしまいました笑笑内容もとても面白いので、これからも更新楽しみにしています!!!!無理なく頑張ってください😚♡ (2022年8月11日 0時) (レス) @page28 id: d41656e1e9 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» コメントありがとうございます!少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。更新も自分ペースでボチボチ頑張ります! (2022年8月7日 20時) (レス) @page23 id: e8b342a20d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:哀 | 作成日時:2022年7月23日 10時