2､あのこがほしい ページ4
｢ロボロ、頼んでたやつはどうだ？｣
予定より少し早めの訪問だ。
もっとも、この男に『時間通り』を求めることのほうが難しいから別に気にせんけどな。
｢はいはい、Aちゃんの資料やろ？一応探してみたけど、国籍とかしか分からんかったよ｣
この施設の機能の一つとして、ごく1部の国々の過去10年分までデータベースのバックアップを取り、閲覧することが出来る。
もちろん、普通に犯罪なので他国に漏れたらとんでも無いことになる。
今回グルッペンから頼まれたのは、とある少女のデータを、キリがないくらいの個人情報の中から特定する、という5年に1度あるかないかレベルの無茶ぶりだった。
｢はい、これやな。｣
｢おお...よう見つけたなぁ...｣
｢お陰様で5徹やわ｣
渡した資料の中身は、名前、生年月日、血液型、出身国など、基本中の基本の情報のみだ。
そのなんの変哲もないような情報が、7年前の消去済データベースから見つかった。それから、ファミリーネームだけはどうしてもわからない。
あまりにも不自然だ。
｢ふむ、クロリス帝国か...｣
｢もう無いなぁ、そういえば｣
｢帝国は基本的に長続きしないからな｣
クロリス帝国。
今やもう無人の、小さな島国。
自然を愛し、自然に愛されたという、戦争とは無縁に思える国家だった。
そんな国が滅びた理由は、まだはっきりと分かっていない。
生き延びた老いぼれたちからも歴史は継承されることなく、薄れるばかりだ。
｢ていうか、それ見て何するつもりなん？生きてるかも分からん女の子の資料なんて、使い道あるように思えんけど。｣
｢まあ、色々...｣
｢...べつに何に使おうが口出しせぇへんけど、トントンにだけはバレんようにしてくれよ｣
この機能を使うことを、彼はあまり良しとしない。便利だが、リスクが高い。
セキュリティは充分だが、もしものことがある。
｢生きてたら...19！？19か...そうか...｣
何をそんなに驚く必要があるのか。
そういえばこいつ、頻繁に外国に渡っとるってゾムが言ってたな...なんか関係あるんやろうか。
そもそも、外交ならオスマンに任せればいいのでは...気の合う外交官のもとへ訪れているのであれば話は別だが...
あれ？なんかこれ、トントンが引き抜かれたときと同じ流れでは...
(あかん、考えれば考えるほどめんどくさいことになるビジョンしか浮かばん)
終いにはバレたらごめんな！なんてスタコラ部屋を出ていってしまうものだから、胃痛と目眩が止まらない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
哀(プロフ) - 左原さん» 感想ありがとうございます！すごく嬉しいです...手汗がとまらない...これからも読んで頂けると幸いです！ (2018年6月2日 17時) (
レス) id: 037484ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
左原(プロフ) - 文章も設定も凄く素敵で大好きです... (2018年6月2日 11時) (レス) id: 28700181e9 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - 朝霧さん» わーい！お気に召したようで嬉しいです！コメントすごくありがたいです...頑張りますね！ (2018年5月25日 23時) (レス) id: 037484ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 - 待って、、、こーいうの好きなんやけど、、、ああ！申し遅れましたねェ、朝霧言いますー、ほんまこういうの好きですゥ！頑張ってください！ (2018年5月25日 12時) (レス) id: 3d4e8d6b36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：哀 | 作成日時：2018年5月20日 19時
