7､新しい装い ページ19
｢あ、いらっしゃい。｣
｢こんにちは。｣
｢はい、こんにちは。｣
英国にならって挨拶を交わす。
国籍も年齢も違うであろう彼らは決まって英語で話すので、Aもそれに従うことに決めたのだ。
｢傷の様子はどうかな？｣
｢もう全然見えないよ。｣
傷口が癒えるまで城外に降りることも武器に触ることも駄目だと釘をさされたAは、しぶしぶではあるが治療に専念していた。
隠していたはずの武器を抜き取り、元々仕えていた国の軍服も廃棄しているあたり、この神ちゃっかりしてるなぁ、と思うなどした。お陰でペラペラの患者服生活だが。
｢うん、それなら大丈夫そうだ。｣
｢なにが？｣
｢グルッペンから伝言だよ。今日いる幹部を全員揃えて夕餉をとるから、自己紹介もかねてどうかって。｣
｢わかった。｣
本来なら自ら伝えたかったのだろうが、監視カメラで捉えても少女があまり同じ場所に留まることを好まないため、幹部との遭遇率が異常なほど低い。
しかし不定期ではあるが医務室には訪れるため、だいたいの伝言はこの神を通して少女に届く寸法である。
そのことにグルッペンが不満タラタラだったことを知っているため、神は小さな優越感を抱いていることも確か。
｢...ああこらこら。そのまま向かおうとしないの。｣
などと考えているうちに扉へスタスタ歩いていこうとするAをとめる。
｢Aちゃんの軍服は廃棄したって話したよね？｣
｢うん。｣
｢はい、新しい軍服｣
広げてみれば、随分とまあ可愛らしい軍服ではないか。
黒を貴重としたミディジャケットを、輝くイエローのタイが飾る。プリーツスカートにも見える短いパンツと、全体に施された細かな刺繍。膝までのブーツはヒールこそあるものの、歩きやすいように工夫がなされ、しかも仕込みブーツ。
じぃと眺めたまま動かない少女に笑みがこぼれた。少しの間だが担当医をやっている。多少の感情の変化なら気が付ける。
｢着替えておいで。きっとグルッペンも褒めてくれる。｣
サイズぴったりの軍帽を被せてやれば、あっという間に扉まで駆け出してしまう。
新調した軍服を大事そうに胸に抱える姿は、見た目相応にも見えた。忘れてはいけないのが、彼女は齢19ということだ。
｢ありがとう。｣
ドアノブに手をかけて、しっかりと目を見て。
言い終えたが早いか、用は済んだとばかりにさっさと退室していった。
｢...絆されてるなぁ｣
実を言えば、可愛くて手のかかる妹ができたようで治療も満更ではないのだ、彼も。
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哀(プロフ) - 左原さん» 感想ありがとうございます！すごく嬉しいです...手汗がとまらない...これからも読んで頂けると幸いです！ (2018年6月2日 17時) (
レス) id: 037484ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
左原(プロフ) - 文章も設定も凄く素敵で大好きです... (2018年6月2日 11時) (レス) id: 28700181e9 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - 朝霧さん» わーい！お気に召したようで嬉しいです！コメントすごくありがたいです...頑張りますね！ (2018年5月25日 23時) (レス) id: 037484ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 - 待って、、、こーいうの好きなんやけど、、、ああ！申し遅れましたねェ、朝霧言いますー、ほんまこういうの好きですゥ！頑張ってください！ (2018年5月25日 12時) (レス) id: 3d4e8d6b36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：哀 | 作成日時：2018年5月20日 19時
