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兵士達の行進の足音が聞こえる中庭を抜けて、しんと静まり返った廊下へ出る。
遠くから響くはきはきとした点呼が妙に心地いい。
そんな少女は、傷も大分回復し、今は古傷の治療に専念している。
その治療が完了するまでの期間の大部分を後輩と接する時間に割いていたが、時折こうして城内探索へ繰り出す。
忙しなく頭をふって当たりを見回し、もはや癖となった音を殺す足使いで歩みを続ければ、木材を用いた他の扉とは雰囲気が違う、軽い素材でできた引き戸へたどり着いた。
｢...紙のにおい｣
かすかに、紙とインクのにおいが漏れる。
はてさて、扉の隙間からほんのり香るほどの紙の量、なんの部屋なのだろう。
少なくとも、前の国にはこんな部屋は無かった。
好奇心に逆らえず、慎重に音を立てないように扉を引く。
どうやらそこは談話室のようで、イスとテーブルが置かれていた。開け放たれたカーテンから見える景色は、争いごとと分断されているかのような錯覚を見せる。実に滑稽な幻想だ。
それから目線を外して、香りのする方向へ視線をずらす。
−−そこは、見渡す限り本、本、本。
今まで縁がなかったものたちに少女は瞼を数回ぱちぱちして思わず駆け寄る。
奥行き充分、広さも充分。
これだけの量を集めるのに、どれだけの労力を消費したのか。想像もつかない。
｢おや、見かけないお嬢さんだ。｣
突然後ろから聞こえた声に肩を跳ね上がらせて、ゆっくりと振り返る。
｢ああ失礼。驚かせてしまいましたね。私の名前はエーミール。ここでアカデミー生の教授をしていましてね。よろしければSweetie、君の名前も聞かせてくれるかい？｣
きれいに分けられたバニラカラーの髪の毛に、穏やかなグレーの瞳。ブラウンのベストを上品に着こなしてループタイを飾る彼は“エーミール”と名乗った。モノクルが知的な印象を抱かせる。
差し出された手を握り、少女は名乗る。
｢...A｣
｢なるほど君が...｣
会えて嬉しいよ、Aさん。
笑顔を深めて一言。
英国紳士...だったか。
手馴れた様子で本棚までエスコートする彼は、恐らくそれの類なのだろう。
｢ここ、入ってよかった？｣
｢うん？良いも何も、ここは図書室だ。正しく平等に、知識を分け与える場所じゃないといけない。｣
｢グルッペンに似てるね｣
｢えぇー...俺は戦争屋じゃないんやけどなぁ｣
｢ちがうの。｣
｢分かってますよ。遠まわしな言い方、でしょ？｣
｢うん。｣
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哀(プロフ) - 左原さん» 感想ありがとうございます！すごく嬉しいです...手汗がとまらない...これからも読んで頂けると幸いです！ (2018年6月2日 17時) (
レス) id: 037484ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
左原(プロフ) - 文章も設定も凄く素敵で大好きです... (2018年6月2日 11時) (レス) id: 28700181e9 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - 朝霧さん» わーい！お気に召したようで嬉しいです！コメントすごくありがたいです...頑張りますね！ (2018年5月25日 23時) (レス) id: 037484ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 - 待って、、、こーいうの好きなんやけど、、、ああ！申し遅れましたねェ、朝霧言いますー、ほんまこういうの好きですゥ！頑張ってください！ (2018年5月25日 12時) (レス) id: 3d4e8d6b36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：哀 | 作成日時：2018年5月20日 19時
