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summer Rendezvous*葉月 陽* ページ8

どうやら、本当に少し眠ってしまったらしい。
そばには彼の姿も見えず、客も若干入れ替わっている。
かなり酔いがおさまったものの、いまだにうっすらと気分が悪い。
飲み物でもほしいな、と思ったその時だった。


「あれ、1人で荷物番?俺らと遊ばねえ?」

「なんなら色々おごるよ!」

「冷たい友達とかほっとこうぜ!」


3人にぐるりと周りを囲まれると、さすがに寝たふりもなにもできない。
どうしたものかと考え込んでいると、腕が引かれた。


『…やめてください。』

「良いだろ?楽しもうぜせっかくなんだから。」

「そうそう。良いでしょー?」


3人がわたしを囲む輪を少しずつ狭めていく。
そしてあれよあれよという間に岩陰に連れ込まれてしまった。


『いい加減に離してください。』

「すぐ気持ちよくなるから。」

「大丈夫、ちゃんと使うよ?」

「抵抗しても痛くなるだけだぜ?」


腕を掴まれ、脚を強引に開かされる。
そして腕を掴んでいる男の顔が、ゆっくりと近づき、くちびるが触れた、その時だった。


「…何してんだよ。」


ペットボトルを携え、恐ろしい形相で睨む葉月くんがいた。
3人組は気迫に気押されたのだろうか、わたしを手荒く解放するとどこかへ行ってしまった。


「ごめんね、怖かったよね。」


葉月くんは申し訳なさそうに笑い、ペットボトルを差し出してきた。
遠慮無くそれを飲ませてもらい、口を開いた。


『大丈夫です。命に関わりませんから。』


言い終えた瞬間、背中や肩に軽い衝撃をかんじた。
目の前には、ひどく真剣な顔をした葉月くんがいた。


「……ねぇ、Aちゃん。もしあのままだったら、最後までされてたかもしれないんだよ?」

『はあ…あ、助けてくださってありがとうございました。』

「そんなんじゃない!!」


いきなり厳しい声音になり、思わず肩が跳ねる。


「…荷物のとこ、戻ろう。」


手を引かれて、パラソルの下に戻った。

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(思い出した。)

帰りの車、またも酔いで朦朧とする意識の中で一つの映像が浮かび上がる。
小学校4年のとき、転入してきて馴染めなかったわたしに話しかけてくれた、あの人。
確かあの人も、“葉月 陽”だった。
結局その学校には、1年ほどしかいられなかったけれど、彼とはよく話した。
そう考えれば、妙な馴れ馴れしさも説明がつく。
とりあえずそこまでわかったところで、わたしはうつらうつらと船を漕ぎ始めた。

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藍華(プロフ) - リコさん» 気づかなくて申し訳ありません…!楽しんで頂けたのなら幸いです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2015年4月20日 23時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)
リコ - 新さんをリクエストさせてもらったリコです!!難しい要求だったのに、すばらしいお話になっていてスゲー!!って思いました。リクエスト通りでおもしろかったっす!ほんとーにありがとうございました☆ (2015年2月28日 12時) (レス) id: c922c4cb93 (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - *郁夜*さん» 文字数が足りず、コメントなど少なくて申し訳ありませんでした…満足していただけたのなら幸いです。消化遅くなり誠に申し訳ありませんでした。 (2015年1月3日 23時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)
*郁夜*(プロフ) - 名前は変わってますけど、いっくんをリクしたものです!!書いていただきありがとうございました!とても満足しています! (2015年1月3日 21時) (レス) id: 0fc071909b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - まいさん» すみません!2に移行した際に外すのを忘れていました。ご指摘ありがとうございます。 (2014年12月17日 18時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍華 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年8月9日 20時

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