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unrequited love*睦月 始* ページ12

脱いだらスゴいってこういうことかなどと考え始めた自分に、やたら客観的に俺も男なんだななんて思いつつ、なるべくそちらを見ないようにAに脱いだ服を渡す。

『これ、良かったら使って。着替えたら、ソファ座ってていいから。』

落ちて来たのはどう見ても男物のパジャマで、彼女をゆっくりと振り返れば可愛らしさとは到底無縁な無地のTシャツとショートパンツ姿だった。

『兄さんが置いてったやつだけど、洗ってあるから。…わたしもさすがに同級生の前でバスタオル1枚でいたくないし。』

俯きがちにそういう彼女は、俺の制服を抱えて洗濯機があるらしい脱衣所へ行った。

(兄さんの、ね…兄弟が居たのか…)

大人しく渡されたパジャマに袖を通すと、覚えのある洗剤の匂いに包まれた。

『…浴室乾燥使いたいから、シャワー浴びたいなら今行ってきて。』

いつも通りの声にハッと意識を引き戻し、振り向いて声をかける。

「いや、いい。そこまで冷えているわけでもない。」
『そう。』

ハンガーを持ってバスルームに行き、しばらくすると声がかかる。

『…何か、飲む?コーヒーか緑茶、あとココアなら、あったかいの出せるよ。』
「いや、そんなに気にしなくていい。」
『そう。』

電子レンジの駆動音と、ガサゴソという音が止まると、スリッパの音がローテーブルに近づく。
湯気の立つマグカップをテーブルに置くと、なんとも自然にカウチソファの少し空いたスペースに体を潜り込ませた。

「……何やってるんだ?」
『何、って…ソファ、座っただけ…』

ぴったりと触れ合うショートパンツから伸びる脚や、Tシャツ越しのやわらかな腕。
ちょっとしたパニックに陥る俺をよそに、Aはココアを飲み始めた。

『………ひとくち、いる?』
「は?」
『…ごめん。見てたから。』
「…大丈夫だ。さっきも言ったがそこまで冷えてない。」

漂う甘い匂いに、頭がくらくらするような心地だ。
そういえばカカオには「そういう」気分になる成分があるらしい。

「なぁ、近くないか?」
『…寒いかな、と。』

親切心でした、ご迷惑でしたか、みたいな顔をされてもこちとら男子高校生だ。
白い首筋にやわらかな肌、薄着になったことで身体の起伏がわかりやすくなり、なんとも煽る。

「…A。今の状況、分かってるか?」

そっとマグカップを抜き取って、テーブルに置く。
頬に手を這わせると、くすぐったがるように擦り寄ってきて、思わず熱い息が漏れた。

そう、これは、カカオのせいだ。

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藍華(プロフ) - リコさん» 気づかなくて申し訳ありません…!楽しんで頂けたのなら幸いです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2015年4月20日 23時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)
リコ - 新さんをリクエストさせてもらったリコです!!難しい要求だったのに、すばらしいお話になっていてスゲー!!って思いました。リクエスト通りでおもしろかったっす!ほんとーにありがとうございました☆ (2015年2月28日 12時) (レス) id: c922c4cb93 (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - *郁夜*さん» 文字数が足りず、コメントなど少なくて申し訳ありませんでした…満足していただけたのなら幸いです。消化遅くなり誠に申し訳ありませんでした。 (2015年1月3日 23時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)
*郁夜*(プロフ) - 名前は変わってますけど、いっくんをリクしたものです!!書いていただきありがとうございました!とても満足しています! (2015年1月3日 21時) (レス) id: 0fc071909b (このIDを非表示/違反報告)
藍華(プロフ) - まいさん» すみません!2に移行した際に外すのを忘れていました。ご指摘ありがとうございます。 (2014年12月17日 18時) (レス) id: a2cd4c3dee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍華 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年8月9日 20時

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