怖い夜と夜明け ページ21
Aは自分に起こった現状を整理しきれずにいた。
少しでも体を動かすと激痛が下腹部を襲う。
時間を掛けて起こせた体はあちこちにアザができていた。
小刻みに震える手で左腕をさすり、自分を落ち着かせる。
Aの癖だ。
そこには以前ダイナ岩が埋めてあった。
一瞬で楽になれると言われ、Aにはお守りみたいなものだった。
それが無くなった今もその癖は治っていない。
怖い―――――
デスマッチで極限の恐怖を何度も味わったが、それに近いものを感じた。
殺されると思った。
緊張でからからになった喉は飲み込む唾すらなく喉が詰まる。
『痛い…』声に出そうにもカフッと音を鳴らしただけでずきりと痛む喉。
『(喉を切られた人の音)』
おぞましい光景とその音を思い出す。
動けない事はないと、服を身につけ部屋から逃げた。
見渡しのいい野原を見つけるとそこに座った。
３６０度見渡せるから逃げ道の確保にも適していた。
薄暗くはあったが夜明けを導くように雲が流れやがて朝が来た。
チョッパーは薬草を摘みに早朝から島をウロウロしていた。
「ん？ この匂いは…」
匂いを頼りに進んでいけばAの姿を見つける。
「(海賊殺しがいるー！！)」
心で絶叫しその様子を木の影から覗いていた。
「(殺されるー！！)」
もう泣きたいチョッパーだが、ちっとも動かないA。
「(油断させておいて俺を殺す気だな！？ だって血の匂いが…)」
え？
匂いに敏感で、よく迷子になるゾロを探しすのに便利な鼻。
しかし人間の血とは少し違う事にも気が付く。
「(何かの薬を飲んでいるのかも知れない…)」
そう思い付くと興味が湧いてきた。
「な、なあ！」
大きな声で呼びかければAが振り向いてチョッパーを見た。
Aは『逃げなきゃ』と立とうとして痛むお腹を反射で押さえてしまう。
「お前怪我してんだろ！？」
やはりおかしいとAに走り寄り、ばっと手を広げる。
「武器なんて持ってねえ！ だから怖がらなくていいぞ！」
自分が恩師にされた行動と同じ事をチョッパーは無意識にしていた。
「お、俺はお前なんか怖くねえ！ だけどお前が倒れそうで怖いんだよ！！」
前半は強がりだがそれ以外は本当だった。
『何でもない』と言おうとした声が、カフッと喉を鳴らした。
「俺は医者だ！ どんなヤツだって見過ごす訳にはいかないんだ！！」
次第に雲が分厚くなりぽつりと雨が降ってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 165人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
西城あおば(プロフ) - ゆーじさん» いいえー。こちらこそだよー＾＾ (2017年3月3日 16時) (
レス) id: 8efbdede43 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーじ - 西城あおばさん» あおばー…スゴい癒された！！メンタリストになれるよー！！うーん、それも違う…あおばはそれでお金を貰おうと思わないだろうなーって思った…。かなわないよー！！嬉しい言葉沢山くれて本当にありがとー！！ (2017年3月2日 22時) (レス) id: f6a5d4b00c (このIDを非表示/違反報告)
西城あおば(プロフ) - ゆーじさん» うれしいなぁ。尊敬なんて言葉、私に使うもんじゃないよー。ゆーじの方こそ、尊敬するよ。 (2017年3月2日 17時) (レス) id: 8efbdede43 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーじ - 西城あおばさん» あおばー！！(様！！自分を下僕にしておくれ！)もうそのおおらかさがすてきんぐすぎるよ！！優し過ぎてどきどきしちゃうじゃないかー！！あーもー何で同じ人間なのにこんなに違うかなあ…尊敬してるよー！！ (2017年3月1日 23時) (レス) id: f6a5d4b00c (このIDを非表示/違反報告)
西城あおば(プロフ) - ゆーじさん» いえいえ、こちらこそ＾＾ (2017年3月1日 16時) (レス) id: 8efbdede43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆーじ | 作成日時：2017年2月11日 9時
