ビリーブ 【 トラファルガー・ロー】

クルーの伝言 ページ32

時は経ち、Aのニュースも噂話も聞こえなくなった。

ロー達はA死亡のニュースの日から通夜の様な日々を過ごしていた。


だらだらと酒を飲み、夜空を見上げてはため息をつく。

ローに至っては船長室に閉じこもり、誰とも会話をしない日もある有様。


「あ…伝言バッドだー」


伝言バッドは特定の人物にしか郵便物を届けない不思議な習性のコウモリだ。

主に海軍からの七武海の召集によく使われる。


それを受け取りベポがローに届けるが「捨てとけ」と言うだけ。

一応中身確認するよー、と告げその封を開ける。


「あああああああああああああああ！！！！！」


何だ何だと酔っ払いのシャチと不貞寝していたペンギンも集まる。

「あ、あ、あ…」と言葉にならないベポに痺れを切らせたペンギンがそれを取り上げる。


「なっ！！？」


不機嫌の頂点にいるローがじろりとペンギンを睨む。

いいから見てください！！と無理矢理ローに手紙を渡すペンギン。

ぽいっと捨てるロー。


「下らねェ召集なんざ行かねェ」

「「Aちゃんからの手紙！！」」


ベポとペンギンの声がシンクロした。

呆然とするローに、捨てられた手紙を慌てて拾うシャチ。


ローがそれを奪うようにして中を見れば





みなさんお元気ですか？


レインコート、ぼろぼろにして返せる状態ではなくなってしまいました。

お詫びを兼ねて、ささやかなお返しをしたいと思っています。

７月１５日お時間があったら遊びに来てください。


一番後輩のクルーより





名こそ書いてないものの、Aに間違いはない。

余計な情報を書いていない所にまだ世間の目を気にしている様子が伺える。


カメポースがぷかぷかと水の中を暢気に泳いでいる。


だがこの先にAがいるんだと思えば

なんと愛しい物に見えた事か。


「やったぜちくしょうー！！」飛び回り喜ぶシャチ。

「生きてた！！ 夢じゃないよね！！」ベポは大泣き。

「信じてた…俺は信じてたんだ…！！」とペンギン。


なら、とローは立ち上がり


「進路変更だお前ら！！」

「「「アイアイ！！」」」


カメポースに従ってロー達は進む。

途中に出会った海軍も海賊も邪魔だとバラバラにしながら。


元から力強い彼らなのに

今まで感じた事のないような力が体にみなぎっている。





彼らを応援するかのように


波は彼らの船を導くように流れ


風は彼らを早く行けと船を押す





前へ、前へ


泣き虫なクルーの方へと船は進む。

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