書かれない日誌 ページ22
夜、ローとAは珍しくローの部屋に居ながら本も読まずにぼーっとしていた。
クラニオ島で起きた衝撃が大きく本を読む気にもならなかった。
『ゼット先生…手…大丈夫かな…』
「少なくともAよりは無事だろ」
三角巾で吊った左腕も気にせず
魂が抜けた様に焦点の合わない目。
どれだけ泣いたのか
どれだけ叫んだのか
歩くのも苦痛な荷を運び終えた後の様だ。
ローはローで懐かしいコラさんの声と笑顔を思い出し
泣きたいのか、怒りたいのかも分からない顔をしていた。
『あの金髪の男の人は…誰の知り合い？』
「俺だ」
『…会えたんだ、良かったね』
「あァ、だがドジな性格でAを引きずってた時にやっと来たんだよ」
『え？ あの時だけ？』
「チッ…ドジは死んでも直らねェみてェだ」
何とかは死ななきゃ直らないというのは大嘘だ。
死んでも直っていなかった。
『航海日誌書かないの？』
「……」
書きたくない、それが正直な答えだった。
コラさんとの思い出は自分の中だけでいい。
ぐすっと鼻をすする音が聞こえた。
見ればAは小さく蹲って声を出さない様に静かに泣いていた。
ここまで正面きって泣いたAを見たのは初めてだった。
いつも堪えるし、顔を見せようとしない。
『ごめん…私…本当に死んでいいと思っちゃった…』
静かに熱い息を吐き、ぐずっと鼻を鳴らす。
『ローに銃向けたけど…撃つつもりじゃなくて…置いてって欲しくて…』
ローはAの気持ちはよく分かったので責めはしない。
ローだって長い時間コラさんと話が出来ていたら船に乗らなかった…かも知れない。
待って、探して、諦めてを繰り返しつつ
何年もコラさんの影を探し続けていた。
Aの傷が響かないように抱きしめる。
「１人で抱え込むな、言いたい事はちゃんと言え」
『うん…』
ローと出会わなければ
涙なんて隠して１人で生きるつもりでいた。
ゼファーが迎えに来てくれる事だけを信じて…。
「俺もあの島から離れられなくなる寸前だった」
『えっ…』
「船に乗るあと１歩がどうしても進めなかった…
背中を押されたんだよ、コラさんに、行けって」
『コラさん…って言うんだ』
「あァ、ドジで、変な笑い方する…無茶な海兵だった」
『海兵！？』
いつだったか
Aは泣き顔を隠す為にローに抱きついた。
今は逆だ。
Aを抱きしめ顔を見られない様にしているのはロー。
静かな
静かな夜だった。
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ももか - １の後半から涙が止まらなかった、素敵な作品をありがとうございます! (2022年10月21日 0時) (
レス) @page24 id: ac673f01f1 (このIDを非表示/違反報告)
ももか - １の後半から涙が止まらなかった、素敵な作品をありがとうございます! (2022年10月21日 0時) (レス) @page24 id: ac673f01f1 (このIDを非表示/違反報告)
蘭々(プロフ) - 最期泣きました。この作品に辿り着けて本当に良かったです。ありがとうございます。 (2021年9月11日 13時) (レス) id: f3d7422dc4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーじ - エリカさん» 作品を読んで感想までくれて嬉しいです！！ありがとうございます！！ゼファー本当に男…！！こんなおっさんになりたいです！作者様なのですね！？しかも殿堂作者様…！！寝る前にガッツリ読ませてください！！ ああもう楽しみ過ぎるー！！ありがとうございます！！ (2017年9月11日 20時) (レス) id: f6a5d4b00c (このIDを非表示/違反報告)
エリカ(プロフ) - めっちゃ良かったです！！思わず涙がでてしまいました...。ゼットいいお父さん。ゆーじさんの書くロー超イケメン...。これからも頑張ってください´`* (2017年9月10日 9時) (レス) id: 720530e6d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆーじ | 作成日時：2017年5月23日 14時
