7 魔女 ページ7
月が落ちていく。空は赤く濁り、月もまたその色を写して赤くおぞましい色に染まっている。通信では城壁にゾムさんとショッピさんが到着して無事に鬱先生と合流出来たようだし、南部の最前線もかなり制圧出来ているようだ。夜間戦闘など本来の戦争では起こりえない事態だが、それを見据えて訓練してきた彼らは容易に戦闘を続けている。夜目を与えられただけのゾンビ兵とは格が違うのだ。
｢ふぅ｣
北に出現した敵兵を粗方燃やし、簡易ではあるが壁を作る。ゾンビ兵は頑丈さと引き換えに痛覚や知能を失っているため、物理的な壁で十分に時間稼ぎが出来るのだ。痺れを切らしてその壁を壊すために出てきた魔女を叩くだけで事足りる。自陣に薄く張った魔女避けは期待以上に彼女たちに刺さるらしく、迂闊に姿を表そうものならそれが最後になる。既に数十人の魔女が灰となり、見覚えのある……薬理の魔女もまた灰燼と化した。もとより希少な魔女だ、仲間内での粛清で数も減っていたようだし残りが数人でもおかしくない。
『Aさん、北はどうっすか』
｢ほとんど片付いてる｣
中央司令部の声の合間を縫ってショッピさんの声が聞こえた。彼に伝えた通り既に北は片付いていたようなものだし、そろそろ中央に戻った方がいいかもしれない。
『エミさん、北部片付いてます。どうしますか』
中央からの通信は受信に限定しているため、私からの報告が届くことは無い。代わりにショッピさんが担ってくれるようだ。
『城壁に戻って警戒に務めて下さい』
｢……了解｣
『了解っす』
念の為壁をもう1枚立てる。これだけあれば南部の戦線が落ち着いてから出兵しても十分に間に合うはずだ。周囲に魔女の気配はなく、日陰に雪の残る平野は見渡す限り生命の息吹も無い。あるのはもはや生きているとは言い難い者達だけである。これ以上何かをする必要も無い、戻るだけだ。だというのに、何故こんなにも悪寒がする。
｢A｣
瞬間移動の術式を組み終える数瞬前に、それは私の耳に届いた。
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旱(プロフ) - 占いツクールでまさかこんな素敵な作品に出会えるとは思いませんでした…話もちゃんとしていて楽しく読ませていただきました。魅入る者を作った作者さんと同一人物だったとは…素直に高評価です。 (2019年7月24日 12時) (
レス) id: 601b9a7554 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月26日 19時
