Special1-1 zm ページ22
zmルートです。
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我々国では既に春爛漫といった時期だが、北上すればまだ雪深い地域はある。1人での雪中行軍に細心の注意を払いながら、俺は木々の生い茂る森を歩いていた。そろそろ今日の寝床を決めなければならないが、上手く木の間が空いている場所がなく決めあぐねている。既に日は沈み始めており、生死の危機すら感じる時間である。
｢……お｣
数メートル先に平らで木々の間も良い具合に空いているスペースを見つけた。今日はあそこで寝ることにしよう。背中から荷物を下ろして寝床を整える。雪山での長期行軍の際は、地面からの冷気にきちんと対策していれば意外と暖かく過ごせる。
乾燥燃料に火をつけて缶詰と雪の塊を入れた器を温める。夏場と違って水分の確保が容易なのが雪中行軍の楽なところだ。手の届く範囲で可能な限り様々な種類を持ってきたつもりだったが、いい加減缶詰生活には飽きてきた。とはいえ野生動物1匹見かけることの出来ない雪山では贅沢も言っていられない。
簡素な食事を取り終えると、日が沈み切らないうちにカンテラに火を移して寝袋に身体を収める。不意にカサリと乾いた音がして、胸元にメッセージカードを入れたままだったことを思い出す。
｢……A｣
黄緑色の紙に綴られていたのは我々国の軍で使用している座標だった。大規模な軍隊を動かす際は目印や時間を目安にするため、幹部内では座標を使い慣れない者もいる。もっぱらこの暗号じみた指示表現を使うのは正確に場所を把握する必要のある隠密部隊だ。似たような緑でも、主に大隊への指揮を担当するオスマン宛のものではない。
｢もうすぐ｣
座標は以前旅行に来た場所よりもっとずっと北にある森を指していた。呪われた森なんて名称で絵本に出てきたり、魔女が住むから近づいてはいけないと子どもに言い聞かせたり。とにかく鬱蒼として不気味な森だ。その中ほどにAはいるらしい。明日には恐らく辿り着ける。
｢…………｣
会いたい、と口に出しかけてやめた。もう後悔はしないと決めたのだ。会いたいのではなく、会いに行って言わなければ。眺めていたメッセージカードをしまい、カンテラの灯を落とせば辺りは闇に包まれた。
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旱(プロフ) - 占いツクールでまさかこんな素敵な作品に出会えるとは思いませんでした…話もちゃんとしていて楽しく読ませていただきました。魅入る者を作った作者さんと同一人物だったとは…素直に高評価です。 (2019年7月24日 12時) (
レス) id: 601b9a7554 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月26日 19時
