Special2-4 ページ28
｢じゃあ、こうしましょう｣
左手に野菜を抱え、手を繋いでいた右手で彼女を抱えあげた。頭に必死ですがりついてくるが、甘えたいのか邪魔がしたいのかちょっとよく分からない。何にせよ案内人が仕事を放棄したのであれば他を頼るだけだ。
｢すいません、この子の家がどこか分かりますか｣
｢んん？大体この辺の子は向こうのデカい家に連れてきゃ解決するぞ｣
｢あざす｣
海の男は国籍を問わずさっぱりとした人が多い。確かクソ先輩も海に近いところの出だったはずだし。
向こう、と指された先には確かに大きな洋館があって、身形の良さから予想はしていたが良いところのお嬢さんだったかと苦い気持ちになる。
異国の知らない男が娘を抱えて訪ねてくるのだ、面倒事以外の何物でもない。しかしここまで首を突っ込んだ以上は腹を括るべきだ。
｢やだ〜！ママ連れてっちゃやだ〜！｣
幼女は幼女で不思議なことを言っている。流石に人妻に手を出す気は無い、というかこの年で不倫の存在を知っているのか？
｢ほれ、着きましたよ｣
｢いやー！｣
問答無用で呼び鈴を鳴らす。館の中からは随分賑やかな声がしていて、表札も無いことから学校のようなものかもしれないと思い直す。尚のことママとやらの存在が謎になるが。
｢はーい。……リザ！？｣
扉から出てきたのはくたびれた雰囲気の男性で、彼女によく似た黒い瞳をしていた。見知らぬ男性に抱えられた幼女を見て限界まで目を見開くと、慌てて抱き抱えるのを交代した。
｢あの、ありがとうございます。リザがお世話になりました｣
｢いえ、勝手に声掛けたんはこっちですから｣
｢……東の海を越えた方の訛りですか？｣
｢え、あ、よく分かりましたね｣
幼女と同じようにじっと顔を見つめられる。流石に男相手だとゾッとするが、揃いも揃って何だというのだ。
｢……大したおもてなしも出来ませんが、良ければお茶でもいかがです？｣
｢いえ、この後まだ用事が｣
｢なら少しだけ！ここにいてください！｣
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旱(プロフ) - 占いツクールでまさかこんな素敵な作品に出会えるとは思いませんでした…話もちゃんとしていて楽しく読ませていただきました。魅入る者を作った作者さんと同一人物だったとは…素直に高評価です。 (2019年7月24日 12時) (
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月26日 19時
