怪しい薬�� ページ5
総統室には書類を出し遅れたであろうゾムとショッピ、彼らを叱るトントンと監視されながら書類を進めるグルッペンがいた。先程までの2人の様子を見る限りではグルッペン以外には退室してもらった方がいいかもしれない。
｢グルさん、ちょっとええか？｣
｢ああ、ロボロ……？｣
子どもを抱えて子どもと手を繋いできた俺の姿が予想外すぎたのか目を見開き、ペンを取り落とした。トントン達もこちらを見て何事かという顔をしている。
｢くられ室長の実験でフィーナとAがちっさくなってしもたらしくて……その、話も聞けんくてどっちがどっちかもよう分からん｣
フィーナ(仮)は大人が4人もいることに驚いたのか、手を繋いだまま俺の後ろに隠れた。A(仮)は微動だにしないし何を考えているのか掴めないままだ。
｢こっちがAやな｣
｢ですね、割と分かりやすいっすね｣
ゾムがその場にしゃがみこんで俺の足元に向かって手を振る。その先にいるのはフィーナ(仮)だが、ショッピくんもゾムもこっちがAだとひと目でわかったんか。
｢え、でもギャン泣きしとったで｣
｢いや〜どう見てもこっちがAやろ｣
おずおずと顔を出しては珍しくニコニコ顔のゾムに手を振られてビクついて隠れることを繰り返している。手は離れたが代わりに足に巻き付かれた。どうやら俺は懐かれたらしい。
｢Aさん、お菓子食べません？｣
トントンのデスクには常に飴を始めとしたお菓子が入っており、どうやらそれを貰ったショッピくんがフィーナ(仮)……いやAを誘惑する。
｢いっといで｣
足に張り付くAの頭を撫でてやれば、誘惑に負けたのかショッピくんの元へと歩いていった。その間にフィーナを降ろして手を繋いだところでグルさんが近寄ってくる。
｢フィーナか。小さいなぁ｣
｢……！｣
デレデレした顔を隠そうともしないロリコン総統がフィーナに手を伸ばしたが、頭に触れる前に躱して俺を盾にした。今の動作は建国直後の不安定な時期、スラム街でよく見かけたものである。
｢フィーナ、大丈夫｣
肩を撫でて、頬に移って柔らかい頬を堪能する。少し緊張が解けてきたのか嬉しそうな表情が出ている。それから頭を撫でれば一瞬不安そうにしたものの、叩かれないと分かれば素直に頭を差し出した。名前にも違和感を示さなかったし、ゾムたちの言う通り泣いていたのがAでこちらがフィーナなのだろう。
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作者名：志摩 | 作成日時：2019年5月16日 1時
