Lost & Found【橙】

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私と海斗の関係をなんて説明しよう。

甘い関係といったら語弊があるが、幼馴染としての甘さは日々感じている。

だってほら。
同じ学部じゃない私のことを心配して、友達ができたか、なんて聞いてくる。
自分の方が人見知りなくせにね。


バンドサークルの新歓。
紙コップに入れられたジュースを飲みながら、海斗の様子を伺う。

借りてきた猫のようだ。

歓迎する会なのに、警戒心むき出しで、大人しい。
重たい前髪で隠された瞳が、キョロキョロとあちこちに動く。


大学生になったら変わると思っていたけれど、やっぱり全然変わらない。


子供の頃から大人にも、同い年にも、年下にも、可愛いと言われ続けてきた海斗。

カッコいいと言った方が喜ぶけれど、可愛いのは間違いないんだから。

ふふっ、と思わず声が漏れると、不服そうに唇を尖らせる。



新入生の座るテーブル。
色んな先輩が順番に話しかけてくれて、サークル活動の話、楽単の話、高校の話。

この独特のそわそわした感覚が、少し心地よかったりする。


「はじめまして〜！きみ、名前は？」
「Aです！」
『えとー。まつくらかいと、です』
「あっ、俺もかいと！」


目の前に座っている男の子が、海斗を見ながら元気よく声をあげる。

顔が小さくて、くしゃっと笑った顔がわんこみたい。


「ちなみに俺も、かいと…」


その隣には、目のぱっちりした色白の男の子。


「カイトがトリプル！！」
「渋滞してる…」


カイト卓が偶然のような奇跡で生まれたことで、その場は大盛り上がり。
みんなで連絡先を交換する。

話しやすい二人だったからか、緊張で能面の様になっていた海斗もすっかりご機嫌だ。

うみ、ちゃかちゃん、海斗。

理由はないけれど、私の大学生活絶対楽しくなる、そんな確信が生まれた。


「どうする海斗？」
『Aが入るなら』
「ふふ、うん。そうしよう」


同じ最寄り駅、家までの河川敷を歩きながら夕陽に染まる横顔を見つめる。

何度も見た光景なのに、見飽きることはない。


黒髪がオレンジ色の光で透ける。

茶色の瞳はその光を集め、水面よりもきらきらと輝いていた。

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