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ペアフレグランスって、ただ二人の香りが合わさるだけだと思っていた。
でも、ようやくわかった気がする。
肌を重ねると、より、その人自身の体臭と混ざり合う。
官能的で、思考鈍らせるような香り。
「痛くない？…そうそう、いい子」
怖くなって手を差し出すと、ぎゅっと恋人繋ぎをしてくれた。
短く切り揃えられた爪。
ベースを押さえる硬い指先。
ぽたり、とうみの汗が私の肌に落ちた。
冬なのにね。
「今は、俺のこと見て」
彼のネックレスが揺れている。
少し伸びた前髪の奥、必死にこちらを見つめる瞳が絡まって、切なそうに顔をゆがめた。
何故が目の奥がじんとする。
何が、とかじゃなくて。
混乱した頭では全てが他人事のようだった。
息遣いは荒くなっていくのに、心だけが動きを止めて何も感じない。
「かいとっ…海人」
「っA、」
絶対に呼べないと思っていた名前も。
一度海人と呼んでしまえば、薄れていくのは海斗の方だった。
唇と手があちこちに触れて、揺さぶられるたびに。
あぁ、海斗もこんなことをしたんだって。
知らなければよかったな。
知らなかったら、全然平気なのに。
一度知ってしまったらもう、想像でしかなかったものが現実になってしまう。
こんな行為、好きな人としかできないって思っていた。
愛を確かめ合うためのものだって。
けれど、そんなのは幻想だ。
愛なんかなくたってできてしまう。
でも、海斗はきっと。
全力の愛を彼女に注いだんだ。
一挙一動を見逃さないように、大切に。
自分の全てを捧げて、見返りなんて求めずに。
そう思うと、引き裂かれるように苦しかった。
どうか海斗の愛を受け取って欲しい。
それができるのは先輩しかいないのだから。
どうか…。
涙が落ちて枕にしみ込んだ。
私が寝たと思ったのか、うみが電話で話している声が聞こえる。
微かに聞こえる女の子の声。
部屋に溢れかえるブランド品と、
到底学生では手を出せないような楽器と機材。
分かっていた。
でも、うみと居ると何も考えなくていいから楽だった。
先ほどから、着信の通知がちかちかと光り続けている。
きっと返信のない私を心配しているんだと思う。
信じていた当たり前がどんどん崩れていく。
何が正解で、何が不正解なのか。
どんな関係が正常で、どんな関係が異常なのか。
先の見えない暗闇に包まれながら、私は眠りについた。
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N11(プロフ) - maminaさん» 初めまして、コメントありがとうございます。揺らぎからですか！引き続き読んでくださっているようで、感謝しかありません。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました！公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (
レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - あさん» 初めまして、コメントありがとうございます。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました！公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - キさん» 初めまして、コメントありがとうございます。泣きそうになりながらなんて…！とても嬉しいです。こちらの不手際でご迷惑をお掛けいたしました。公開しましたので是非ご覧ください。 (2021年3月7日 22時) (レス) id: f61069127a (このIDを非表示/違反報告)
mamina(プロフ) - 初めまして。揺らぎから大好きでLost&Foundも毎回楽しみに読んでました。#2に続いてまつくのダークサイドみれるのかと思ってドキドキです！宜しければパスワードを教えて頂きたいです。宜しくお願いします。 (2021年3月7日 21時) (レス) id: 9fd2043a8e (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初めまして！最近からLost & Found読ませていただいています！よろしかったら#2のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年3月7日 20時) (レス) id: 89732c56da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N11 | 作成日時：2021年2月12日 0時
