【歌い手】恋愛交響曲。ver.B【大型コラボ】 (ページ7)

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【うらたぬき】アンドロイド・アイロニー/nana ページ7

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　アラームが私の中で鳴り響いて、それに応えるように瞬きをすると体のあちこちが軋みました。

　もう大分ガタが来たのだろうかと思考しながら、胴体に手と足をガシャンガシャン装着していきます。後で油を差して機動を滑らかにしなくてはいけません。

　マスターが来たら、お願いしてみましょう。

「おはよう、A」

　ドアが開いてマスターが部屋に入ってきます。
　リスみたいな茶色の瞳が私のモニターの、甘い甘い声が私の人工鼓膜のスイッチをそれぞれオンにして、私の口は勝手に開きます。

『おはようございます、マスター』

　ざらついた機械音声にマスターは満足そうに微笑み、私の腰に手を回してエスコートします。
　起動直後は電気信号が上手く通らず歩けないので、マスターが歩行をサポートしてくれるのです。

　優しいですね、マスターは。

*

　私はマスターの本名を知っています。

　浦田渉というそうです。

　浦田さん、と呼んでみたいものですが、私のプログラミングが邪魔をしてショートを起こしてしまいます。
　どうせだったら驚かせたいので、慎重に解除を進めていきます。私の学習能力は、浦田さんが思っているよりずっと高度になっています。

　毎朝連れてこられる場所は、小さな部屋です。
　
　灰色のヘッドフォンを被り、聞こえてくる文言を復唱する作業をします。これを一日四回、時間を空けて行います。

　少々退屈ですが、音声は浦田さんの声ですので、嫌ではありません。

【Aはマスターによって誕生しました】

『Aはマスターによって誕生しました』

【Aはマスターがいないと生きていけません】

『Aはマスターがいないと生きていけません』

【Aはマスターの命令に従います】

『Aはマスターの命令に従います』

【Aはマスターの側にいます】

『Aはマスターの側にいます』

　その間に、浦田さんは私のバイタルチェックを行っていきます。ゴツゴツした指先が丁寧に触れる場所は、アルミだったりゴムだったり導線だったり。
　ロマンはありませんが、この浦田さんに触られる時間は好きです。大事にされている気がします。

　機械に心などないのですが。