【歌い手】恋愛交響曲。ver.B【大型コラボ】 (ページ17)

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【となりの坂田】こーるぼーい。/白雨ページ17

夜の繁華街はうるさい。

無駄に店の看板を主張するネオンは眩しいし、夜の夢を見たいふしだらな男女でごった返している。自分を満たして欲しいという下心を抱えながら、今日だって誰かに後ろから話し掛けられるのを待っているのだ。

そんなものを人生の楽しみにしているなんて哀れだな、なんて思いながらその中に一人紛れた俺はまた１回、グビりという効果音がつきそうな勢いでグラスの中のお酒を飲み干した。

自分はお酒に強い訳じゃないからすぐに潰れるけど、それでもいい。別に、そんなの構わない。気にしてもいない。

｢(……つかれた、)｣

俺は出会いなんか求めてない。

ただ酒に溺れたいだけだ。溺れてそのまま、戻ることができないほどの所へ行きたい。体の中を巡るアルコールも、ぼーっとして正常な判断ができなくなってきた使えない頭も、全部全部どうでもよくなるほどの所へ。

グラスの周りに張り付いた結露がグラスから涙を零すようにしてテーブルを濡らしていくのを眺めながら、いつものようにバーのテーブルに突っ伏した。こんな事ならいっそ俺もあいつらみたいに適当な女に声をかけて一夜だけの関係ってやつでも作ってみるべきか？

そしたら全部、現実のことを忘れられるような気がする。知らない女を組み敷いて、好きなようにして、そのまま逃げるようにホテルを出ればいい。そんな簡単なことを俺ができないはずもないし、そもそもここに集まっているのはそうされる事を望んでいる女ばかりだ。

この辺には特に知り合いもいないはずだし、適当にその辺の……なんて考えたところでふと、閉じかけていた瞼が上がりきるほど綺麗な女性を見つけた。

仕事帰りなのだろうか。彼女はきっちりと着崩すことなく身に付けたスーツで俺が飲んだくれていたバーに入ってきた。キョロキョロと辺りを見回してから、特に空いているスペースがなかったのか俺から２つ離れたカウンター席に腰かける。

ミディアムボブの、少し茶髪混じりのその髪に目を引かれた。綺麗な髪。触ったら、サラサラしてそう。そんなことを思いながら彼女に視線を向ける。俺の視線に気づくことなくふーっと軽く息を吐きながら胸元のボタンをいくつか外していく彼女の様に、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

｢……すんません、隣いいですか｣

気づけばそう口走っていて、目の前には少し驚いた顔の彼女。

少し考えるような素振りを見せた後に、彼女は｢いいですよ｣と言って柔らかく微笑んだ。