【男性声優】同業者のあの子 ３[完]

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飲んだのかな、顔が赤いのは外が暗くてもわかる。安元さんから連絡をもらって店の近くまで迎えに行くと、ちょうど出てくるAの姿。

お礼の連絡をし、小走りで駆け寄ってくるAを迎え入れる。決死のプロポーズの返事を保留されたあの日から早くも数日。


「ありがと、迎えに来てくれて」


「ううん、ちょうど近くだったから」


車を走らせながら、以前喧嘩した時のことを思い出した。あぁ、あの時もAを迎えに行って車で仲直りしたんだっけ。そういえば、嫉妬してるAを初めて見たのも車だったな。

俺にとって大事な時間の過ごし方の一つであるドライブも今思えばAと付き合い始めてから更に好きになった気がする。


「あの、返事をさせてもらいたくって」


安元さんから大丈夫だから頑張れ！と連絡をもらっていたけど、え、ほんとに大丈夫？めちゃくちゃ顔強ばってないか？不安に思いながらも、少しだけ寄り道して、話が出来そうな場所に車を停めた。俺の事を見つめる表情にも不安が浮かんでいて、同じようにAも不安なのかもしれない、と、やっと気付いた。


「勝手に不安になっちゃって。仕事のこととか、本当に私でいいのか、とか…今まで通り仕事も続けたいし、趣味だって大事にしたいし、良い奥さんになれないかもしれないけど、」


「うん、それでもいい」


続きを口にしようとしたAの手を握り制止する。返事を貰う前に、まだ、俺にだって言いたい事がある。


「ちょ、待って！俺からもう１回ちゃんと言うから」


「う、はい」


「…付き合ってくださいって、告白した日からずっとAの事を大事に思ってて、今まで通りで幸せだけど、出来ればこれから先もずっと一緒にいたいから、…だから、俺と結婚してください」


「…うん、よろしくお願いします」


ふにゃりと気の抜けたいつも通りの笑顔で返され、一気に緊張がとけた。


「……マジで遅いよぉ」


「ふは、あはは！ごめんね！お待たせしました！」


「はぁ、そんな今日返事貰えると思ってないから指輪も家だしさぁ」


もっと、どうせなら、ちゃんと指輪嵌めたりしたかったのにさぁ。そう言うとくすくすと笑いながら手を握り返してくれる。


「…酔ってて覚えてないなんて言わないでね」


「言わないよ、今日のことは絶対忘れない」


嬉しそうなAの笑顔を見て、俺まで嬉しくなる。指輪もないこんな車の中のプロポーズだけど、こんな方が俺達らしいのかもしれないな、と思った。

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