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あの後の空気の、なんとも言えない重苦しさったら。
ちなみになんですけど、少しってどのくらい?と無理矢理おどける界人に申し訳なくて、ほんとに、ちょっとだけ!と頭を下げて、お互い気を遣いあって接しながら早くも3日が過ぎた。
本当に嬉しかったし、これから先結婚出来るなら界人と、とも思ってた。でもなぜか、言いようのない不安というか、焦りというか、なんというか。仕事だってやりたいこといっぱいあるし。自分の時間だって欲しい。一緒に住む事と、籍を入れる事に差はないよ、紙切れ1枚だしなんて既婚者の友達は笑って言っていて、それを羨ましく感じたこともあるけど、でもやっぱり私には重い事のように感じた。
「まぁ、さ。気持ちは分からんでもないよ」
「はい…」
「仕事セーブしたくない、とか。自分の時間は自分で使いたいとかさ。わかるけど。でも、Aは大事でしょ。界人くんのこと」
「それは、まぁ、もちろん」
「それぞれタイミングもあるだろうし、結婚してない俺に言われても〜って感じかもしんねぇけど。でも俺は界人といるAがすげーいい顔だから、応援したくなるのよ。だいたいその辺の話は俺とじゃなくて本人と直接した方がいいんじゃない?」
どーした大丈夫か、なんて顔を見て声をかけてくれた安元さん。悩みを口にするとなんとも複雑そうな顔をしながらも、話を聞いてくれた。
「あんまり人様の恋愛に首を突っ込みたくない方なんだけど、お前の場合はなぁ」
「…うぅ、ありがとうございます、」
「ちゃんと分かってくれるよ。だいたい家庭に入れなんてタイプじゃないでしょ、彼も。仕事してるAのこと応援してくれると思うけど?」
「…そう、ですよね」
「なに、まだなんかあんの」
「…界人は、ほんとに私でいいのかなぁとか」
大きくため息をついた安元さんはバカバカしいと言わんばかりにスマホを操作した後私に向き直って頭を軽く叩いてきた。…ちょっと痛い。
「バカ」
「っ」
「お前の気持ちは?他の子にプロポーズしてもいいの?」
「いっいやです!それは嫌!」
「だろ?じゃあそれを言うのは俺じゃなくて?」
「界人に連絡します…」
「って言うと思ったからもう呼んでるよ」
「え!?」
「もうこっちに向かってるって、迎えに来てくれるらしいから一緒に帰りなさい」
で、ちゃんと話すこと。
大先輩に背中を押されて、なんとなく、漠然と不安に感じていた気持ちが薄れていくような気がした。
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あゆ - 私の方こそ、になさんに出会えて界人君や声優さんの素晴らしさに気付けて更に好きになって感謝の気持ちでいっぱいです(;_;)私の言葉で少しでもになさんの癒しになっていたのなら良かったです♪短編やスピンオフも引き続き応援させてくださいっ!(*´ο`*) (2020年9月25日 11時) (レス) id: 0d45e1a57e (このIDを非表示/違反報告)
にな(プロフ) - きらさん» きら様ご感想ありがとうございます(*´˘`*)口調なども自分なりの部分も多く勉強不足な所もあるかと思いますがそう言っていただけて本当に嬉しいです(;_;)またお暇な時に短編等覗いていただけますと大変喜びます!今まで読んでいただいて本当にありがとうございました! (2020年9月23日 9時) (レス) id: 40e06de20d (このIDを非表示/違反報告)
にな(プロフ) - あゆさん» 少し長くなってしまって申し訳ございません。こちらこそあゆ様のコメントに癒されて応援してもらっておりました!本当にありがとうございました! (2020年9月23日 9時) (レス) id: 40e06de20d (このIDを非表示/違反報告)
にな(プロフ) - あゆさん» あゆ様こんにちは!ご感想ありがとうございます!連載初期からあたたかい応援をいただいていて、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます(*´˘`*)お暇な時にでも短編等覗いていただけると喜びます!大ファンだなんて嬉しいお言葉ありがとうございます(;_;) (2020年9月23日 9時) (レス) id: 40e06de20d (このIDを非表示/違反報告)
きら(プロフ) - 完結おめでとうございます!界人くんの小説無いんだなと思っていたときにこの小説を見つけてずっと読ませていただいてました!界人くんや他の声優さんたちの話し方なども忠実で、ストーリーもとても素敵でした!完結寂しいですが、短編集などの更新も楽しみにしてます! (2020年9月22日 22時) (レス) id: 402860d582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にな | 作成日時:2020年6月18日 8時