【男性声優】同業者のあの子 ３[完]

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「あの、めちゃくちゃ美味いんだけど、やっぱり」


「やっぱり？」


「…モンスターがのみたい」


「はい？」


どんだけモンスターが好きなのか、この人は。私が怪訝な顔をしていたのに気付いたのか、いや、このコーヒーが飲みたくないとか美味くないとかじゃなくて！と手を振って否定し始めた。話の脈絡がない、え、私にモンスター買って来いってこと？そんなに飲みたい？


「…だからぁ」


「うん？」


「その…さぁ」


「うん、どしたの」


「…俺の家に来ない？」


「へ、今から？」


別にいいけど、なんでわざわざと思わないでもない。折角の2人揃ってのオフで、今日は部屋でゆっくり過ごそうかなんて言って、昨日の夜からウチに泊まりに来たがったのは界人なのに？


「いや、そうじゃなくて」


「ん？」


「これ、そろそろ、一緒に住みませんか…って、お誘いなんだけど…」


後半ごにょごにょ言ってて聞き取り難いけど、え。

緊張した様子の界人になぜかこっちまで緊張してしまう。既にお互いに合鍵だって持ってるし、今までも家を行ったり来たりしていたのに。今、そんな。え？今？


「…って、嫌？」


「え、嫌とかじゃないけど！むしろいいの？」


ゲームする時間が欲しい、1人が好きだなんて、あんなに言ってたのに？付き合い始めてからは時間を共有することが増えたけど、それでも、お互い自分の時間を大切にしていたからこそ今くらいの行ったり来たりがちょうどいいものだと思ってた。


「うん。…最近さぁ、めちゃくちゃ考えて」


「うん」


「あー、今日疲れたなー、Aが家に居ればいいのになぁとか」


「へ、え」


意外だ。
あまりにも驚きすぎてぽかんと開いてしまった口をアイスコーヒーで冷たくなった手で塞がれる。
口を閉じるとすぐに解放されたけど、今度はその手でぎゅっと自分のTシャツの裾を掴むものだから、あぁ、シワになっちゃうよ。


「これ結構恥ずかしいからちゃんと聞いて」


「はい」


「…これ、A好きそうだなぁ〜買って帰るかぁ、あ、今日いないんだっけ、とか」


出てくる例がやけに具体的で、あぁほんとにそういう気持ちを抱えてくれていたんだなと嬉しくなる。きゅんと胸の当たりが苦しくなって、気付いたらTシャツを掴む手に触れていた。


「っ…だから、」


「住む」


「え、はや」


「ね、一緒に住もう？」


目の前の界人は驚いて丸い目をさらに丸めていて、その後すぐに嬉しそうに笑ってくれた。

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