case3-1 finish 寄り道切符とクリエイター ページ20
No side
たまたま撮影関連で鎌倉学校前に来ていたため、Aは海辺で散歩をしていた。
昔の彼女は『小説家になりたい』とよく言った。本が好きで、投稿したりした。
自己満足に過ぎなかったが、今も続けている。他の人々はこれを"遊びの延長"と言った。
一生懸命取り組む者をバカにした。
クイズが好きになったとき、彼女だけではなくその界隈全てに関して侮辱した人間もいた。
尖った彼女が他人に認められる筈もなく。気づけば彼女はあらゆることを不可能と決めつけ、嫌いになった。
しかし「カナタ」というアーティストのたった一曲により、彼女の目には光が差した。
そして以前のような希望を持った彼女へと戻っていったのだった。
気づけば彼女はこう言われた。
「好きなものは好きでいていい」と。
気づけば彼女は曲を作っていた。
気づけば彼女は既に本当の友人を見つけていた。
一番身近にいた人が大切だと実感するまで長い年月をかけた。
気づけば彼女はその人の隣で仕事している。
彼女は常に指輪を人差し指にはめていた。綺麗な加工が施されたもので、彼女が今は亡き彼女の父から昔もらったものだった。
「こんな懐かしむようなこと、前にもあったわ…」と思い出す。
そのときは電車の車庫が一望できる橋の上でたそがれていた。
…下で電車が通った時思ったよりも揺れが強くて「ギャ」としりもちをついたのは恥ずかしくて誰にも言えない。
ずっと歩いていたらしく、気づけば彼女は踏切まで来ていた。
向こう側で彼等が「おーい」と手を振る。
彼女は左右を確認してから、彼等の元へ走っていった。
ーーー
「俺らのこの仕事は仕事にはなるけど遊びの延長だね。」
彼はそう言った。
しかし、その後にこのように呟いた。
「クリエイターってのはそういうもんだよ」
__そういうのもあるって知っていかないとさ。
救ってくれた恩人である二人から同じことを言われたことに驚いた。
目を見開いて彼女は「そうだね」と言った。
その顔は他人に言われるのとは違って、苛立ちは感じていなかった。
彼女は彼らに対して顔を綻ばせ、逆に清々しいまである顔をしていた。
end...?
おまけ後日更新予定
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作者名：神影光希 | 作成日時：2021年3月15日 20時
