▽孤高と後押しと目立ちたがり ページ9
この大会で私が当たったのは強めのビギナーだった。大会だからビギナーでも容赦なく潰したが、手強かった。
『ねぇ、勝ったよ?』
と声をかけるものの、
「…。」
こっちに気づいていないのか、レイは私の方を向いてくれない。
『…勝ったよ、レイ!』
そう肩をガシッと掴む。その時に見えた彼の横顔から、結果が分かってしまった。
『……レイ…私、レイの分まで頑張るよ』
そう呟く。彼は泣いていた。
「悔しい…っ、情けねぇな、俺。」
彼は本当に悔しげな表情だった。
「なぁ…。俺とお前、全然ちげぇのに何でペアなんか組んでくれたのさ。
しかも、[孤高のペア]。
それって"孤"の意味あるか?」
はぁ、今更感ありすぎ。
『互いにずっと一人だったし、
違うところなんてあっていいし、同じところだってある。
私は優等生って呼ばれて、なんか気付いたら独りになって。
高め合うことを知らずに、地区で勝った私はこの事務所に来た。
最初レイを見たとき、なんか通じるものを感じたのさ。』
事実をひたすらに述べる。過去のことをただ話しているだけなのに、嬉しかったはずなのに。胸が苦しくなる。
「当時、一匹狼なんて言われてたしな。」
『はは……めっちゃ変わったね…。』
目付き悪すぎてマジでヤバかった。
「お前はさ、なんでゲーマーなんかになろうとしたん?」
…聞き捨てならない。
『ゲーマーなんか、って何さ。立派な夢よ、世界一って称えられて歴史に名を刻める。
将来もっと立派なスポーツになるかもしれない存在なんだ、ゲーマーって凄いじゃん。
私は憧れたんだよ、その存在価値にさ。
「こんな平凡な自分でもすげぇんだ」
って
見せつけたかった、だけなんだよ。』
さっきから真面目な顔で聞かれて恥ずかしい。
『だから…私らは、ゲーマーを誇りにもって生きていこう。ってね…』
「凄いね」
彼の顔をちらっと見れば、いつもと変わらぬ優しい顔だった。
『…そんなぁ。
バカ真面目に聞かれるような話じゃなかったよ?
__私さ。…ううん何でもないや、ごめん。』
「…ぇ。いや、大丈夫やけど……。」
と戸惑った顔を見せる。
『あ、そろそろだ。じゃ、行ってくるね。』と私が手を振れば、
「いってら」と彼は言って手を振る。
安心して彼に背を向け、舞台へと向かおうとする最後に。
「頑張れ!」
その一言が私をより強くしてくれた。
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緋歌梨(プロフ) - 光希さん» そうなんですね!何も知らないとは言え、すいません…m(_ _)m (2021年2月2日 22時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
光希 - 緋歌梨さん» すみません!こっちは、澤(元夢主の名字)なんです。非常に分かりにくい表記となってしまっていたのでフルネームにさせていただきました。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 064d16a4fd (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - izwさんの漢字違いますよ!“澤”じゃなくて、“沢”ですよ!! (2021年2月2日 6時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神影光希 | 作成日時:2020年10月19日 21時