ロンリーオンリーパラダイス

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「へ、部屋？」

「ニカと二人部屋だから。気をつかわないでいいよ」

あ、二階堂くんもいるのね、と、まわらない頭で思う。

ふらふらする私を抱きかかえるみたいにして、部屋まで行くと、二階堂くんが目を丸くする。

「あれ、Aさんどうしたんすか？」

「ごめんね、ちょっとのぼせたみたい。少し休んだらすぐなおると思うから」


窓側の椅子に座らせてもらったら、やっと息がつけた。

「ニカ、お水買ってきてくれる？」

「はいっ！」

二階堂くんがすごいスピードで出て行く。


藤ヶ谷くんが障子と窓を開けてくれたら、冷たい空気が入ってくる。

「…ごめんね。迷惑かけて」

「全然。大丈夫？気持ち悪くない？」

そう言いながら、ぱたぱたうちわであおいでくれる。

「うん、もう大丈夫そう」

よかった、ってにっこり笑う藤ヶ谷くん。


「これ！お水です！」

二階堂くんがすごい速さで水を買って戻ってきた。

「俺は温泉に行ってきます！」

そしてまたすごい速さで出て行った。

「なんだあれ」

藤ヶ谷くんが困ったみたいに笑って、ペットボトルの蓋を開けてから私に渡してくれた。


二階堂くんが見ていたテレビから笑い声が聞こえていたけど、藤ヶ谷くんがぷつん、ってテレビを切ったら。

急に部屋がしん、って静かになった。



今、話す？

もうやめたいって。

別に夜じゃなくてもいいんじゃ。

でも私が話したら全部終わっちゃう。

本当にそれでいいの？


ぐるぐる迷っていたら、先に口を開いたのは藤ヶ谷くんだった。


「…Aさん。俺の話したいことって言うのは」


藤ヶ谷くんが私をじっと見て。


「もう付き合ってる振りやめようか、って言いたくて」


部屋に藤ヶ谷くんの低いけどよく通る声が響いた。


「……あ、うん。そう、だね。うん。
私の話したいこともそれだったの」

「……」


「いつまでも続けられることじゃないし、私ももうやめたかったんだ」

「…Aさん」


「桐谷さんには別れたって言うし、佐々木部長には藤ヶ谷くんからうまく言っておいて」


と、そこに藤ヶ谷くんの同期の千賀くんが顔をのぞかせた。

「ガヤ、ご飯の時間だってー」


私はお水を一口こくん、と飲むと立ち上がった。


「もう大丈夫だから行くね」


どうかしてる。


自分から言おうとしたことを、藤ヶ谷くんに言われただけなのに。


こんなに泣きたくなるなんて、本当にどうかしてる。

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