ロンリーオンリーパラダイス

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だけど、あれ以来藤ヶ谷くんとは何となく気まずくて。

その上忙しそうな藤ヶ谷くんとはなかなか二人っきりになるチャンスもなく、社員旅行の日を迎えてしまった。

旅行には藤ヶ谷くんも来ることになっていたし、もし少し話ができそうな時間があれば、話をしてみよう、と思いながら箱根の温泉旅館に着いた。

「すご！めっちゃいい旅館！テンション上がりますね、Aさん！」

元気な二階堂くんの声。

「そうだね」

「え、全然テンション上がってないじゃん」

「ニカがうるさすぎるんだよ」

呆れたみたいに笑う藤ヶ谷くんと、久しぶりに目が合った。

「……Aさん、あのさ」

「う、うん」

「夜ちょっと時間ある？話したいことあるんだけど」

「え？！」

「何でそんなびっくりすんの？」

あははって藤ヶ谷くんが笑うのを見たら。

胸の奥の方がきゅうって痛くなった。

「…私も話したいこと、あるから」

私がそう言うと、藤ヶ谷くんは意外そうでもなく、頷いた。

「じゃあ夕飯終わったら、旅館の中庭で。
寒いかもしれないから暖かくして来てね」

全部終わりにしようって思っているのに。

二人になれることをまだどこか嬉しいって思っている自分。


どん、って背中に、何かが当たって振り向くと桐谷さんの鞄だった。

「すみませーん。見えませんでしたぁ」


絶対見えてた！！

最近静かだったのはやっぱり気のせいだったのか！





今年は業績が良かったからか、本当にいい旅館で。

温泉も檜の香りがただようかけ流しで、露天風呂もあった。

外の空気はひんやり冷たいけど、温泉であたたまって、何度も出たり入ったりしていたら、若干のぼせてしまった。

部屋に戻ってお水でも飲もうと思っていたら、廊下の向こうから浴衣姿の藤ヶ谷くんが歩いて来た。

「Aさん、温泉入ってたの？」

みんなと同じ旅館の浴衣なのに、どうして藤ヶ谷くんだけこんなかっこいいんだろう。

「うん。長湯してちょっとのぼせたかも」

「あれ本当だ、あんまり顔色良くない。大丈夫？」

「大丈夫…だい」


そういえば、最近寝つきが悪くてちょっと寝不足だったかも、と思ったとたん、目の前がくらってした。


「Aさん！」

藤ヶ谷くんが支えてくれたから、転ばずにすんだ。


「ちょっと休んだ方がいいかも。俺の部屋すぐそこだから」

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