ロンリーオンリーパラダイス

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え、え、って頭がパニックになる。

ちょっと落ち着いて。

よーく思い出してみよう。


舞台で生き生きと動きまわるミノリ。

脳内でもう一度あの時会った藤ヶ谷くんの彼女を思い出してみる。

確かにすっぴんだったけどめちゃくちゃきれいでスタイルもいい人だった。


他人のそら似……じゃない！絶対本人だよ！



横目でそうっと藤ヶ谷くんを見てみても、まっすぐに前を見ている表情からは何も読み取れなかった。


そこからは、話が全然頭に入ってこなくなってしまった。




気づいたらカーテンコールで、ユウタが共演者の人たちと手を繋いで深々とお辞儀をしている。

慌てて拍手をしたけど。


こんな良席でユウタがほぼ目の前にいるのに、私はミノリのことばかり見てしまった。

そういえば。

あの藤ヶ谷くんが酔っ払った時、タクシーの中で彼女から電話がかかってきて、画面に「みい」って出てた。

ミノリ、を短くした、みい、だったとしたら、辻褄も合う。

誰にも言えないのも、佐々木部長に紹介できないのも当然だ。





「Aさん、ご飯食べて帰ろうよ」

照明がいつの間にかついていて、会場から出ようとする人でざわざわしている。

「Aさん？」

「あ、うん。ご飯ね、何食べようか」

「とりあえずここ出て歩きながら決めよう」


会場を出ると、もう外は真っ暗だった。

「もんじゃは？」

「うん、いいよ」

目に止まった小さなもんじゃ焼きのお店に入ったけど、メニューを決めている間も私はずっと上の空で、結局藤ヶ谷くんが全部決めてくれた。


「……もしかして、気づいた？」


藤ヶ谷くんの言葉に、飲んでいた水を吹き出しそうになる。

「な、な、何に？」

「…気づいたんだね、ミノリのこと」


藤ヶ谷くんは慌てるでも困った風でもなく、淡々とした口調で続けた。


「俺の家で一度会ったよね」

「……やっぱり、そうだったんだ」


ちょうどもんじゃが運ばれてきて、藤ヶ谷くんが焼いてくれる。

香ばしいいいにおいがしてきた。


「みいは地元が一緒で、中学の同級生なんだ。
芸能界に入る前、高校に入ってすぐのころ付き合い始めた」

私は藤ヶ谷くんがもんじゃを焼く手元を見つめながら、話を聞いていた。

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