ロンリーオンリーパラダイス

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「土曜日、舞台だね。待ち合わせして一緒に行こうよ」

そうだ。

土曜日は待ちに待った舞台。

ユウタに会える。

「うん」

そうだよ、嫌なことは考えないようにしよう。


「あれ？なんかもっとテンション高いのかと思ったのに」

「そ、そんなことないよ。楽しみだね！」

そんな会話をしていたら、廊下から女の子数人の喋り声が近づいてくる。

桐谷さんかも、って思うと、二人でいるとこ見られてこれ以上嫌がらせがエスカレートしたら本当に困る。

「もう行くね。
時間とか待ち合わせ場所はまたラインする」

私が給湯室を出ようとすると。

「待って」

藤ヶ谷くんに、ぐいって腕を引っ張られた。

そのまま壁に、とん、って押しつけられる。


「Aさん何か最近変じゃない？」


藤ヶ谷くんがじいってこっちを見てくるから、思わず目をそらした。

「…別に変じゃない。誰か来たら困るから、そこどいて」

「何でこっち見ないの？」

「どいて、もう行かないと」


藤ヶ谷くんの腕からすり抜けて、出ようとするのにどいてくれない。


「ラーメンの人に何かされた？」


急にそんなことを言われて面食らう。

「え？」

「ラーメンの人に会ってから、元気ないんじゃない？
何か嫌なことされたりした？」

「どういう意味？みっくんは優しいし一緒にいたら楽しいし、嫌なことなんて一つもないよ」

「…ふうん」


藤ヶ谷くんを押しのけて給湯室を出て、自席に戻ると。

確かにパソコンにさしていたはずのUSBがなくなっていた。

昔から自分用に使いやすく書類のフォーマットをフォルダー分けしているもので、あれがあるとないとじゃ全然仕事のスピードが違うのに。

げんなりする。


スマホが震えて、見るとみっくんからだった。


『今日俺仕事早く終わんだけど。金曜じゃないけどラーメンどう？』

『ラーメンじゃなくて飲みに行きたい』

『いーよ？』


さすがにどこかで吐き出さないと、やってられない。

USBは見つからないままだったけど、意地で仕事を早く終わらせて、みっくんと待ち合わせしている焼き鳥屋さんに飛び込んだ。

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