ロンリーオンリーパラダイス

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それからというもの。

桐谷さんからの嫌がらせは、徐々にエスカレートしていった。

最初は持ち物がなくなった。

でもまあボールペンとか消しゴムとか、普通にまた買えば済むものだったし、気にしないようにしていた。

だけど。

「Aさん、大塚商会さんから折り返しの電話がないってお怒りの電話が入ってますよ」

二階堂くんが焦って伝えてきた。

「折り返しの電話？」

何のことだろう、と思ったら、しれっと横から桐谷さんが言う。

「その電話受けたの私ですけど。
先日送った資料でわからないことがあるから折り返しお電話くださいって。
Aさん担当なのでお願いしますって言いましたよ」

「き、聞いてない！」

「言いましたよ。忙しそうにされてましたけど、はい、って返事もされました」


絶対に聞いてない、と思ったけど。

証拠があるわけじゃないし、ここで聞いた聞いてない、の話をしていても埒があかない。

とりあえず先方に謝罪をするのが先だと思って、電話に出た。

「お待ちしていたのに、なかなかお電話いただけないから。やっぱり大きな会社だからうちみたいな小さいとこと取り引きするのは面倒なんですかね？」

嫌味たっぷりに言われてしまう。

ひたすら謝り続けてなんとか許してもらえたけど、さすがにこれはダメだろう、と桐谷さんを呼び出した。

「私が気に入らないのはわかるけど、仕事に支障が出るのは困るから」

「何のことですか？大塚商会さんの資料のことなら、本当に私言いましたよ」


そう言われると、100パーセント嘘だ、とは言えなくて。


「……わかった。これからは必ずメモに残してください」

「はあーい」


それからも、ちょこちょこそんなことがあった。

腹が立つのは、そのさじ加減が絶妙にうまいところだ。

上司に報告するほどのミスには繋がらないし、絶対に桐谷さんがやった、っていう証拠も見つからない。

私が困ったり謝ったりするレベルの嫌がらせ。


だけどじわじわストレスがたまって、会社に行くのが憂鬱になってきた。



「Aさん」

最近外まわりで外出が多い藤ヶ谷くんが、その日は珍しくオフィスにいて。

給湯室にいる私に声をかけてきた。

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