ロンリーオンリーパラダイス

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「な、なんで？」

「実は取り引き先の部長さんに、姪っ子さんとお見合いしてくれないかって言われてて」

「……彼女いるって言えば？」

「言ったよ、何回も言ってるんですけど。
信じてもらえなくて。
本当にいるなら、彼女も一緒に食事でもって言われてて」

「何で私？他にももっと適任いるんじゃない？
桐谷さんとか」

「ダメです。本気にされたら困るんで」

「どうして？そうなったらなったでいいんじゃないの？」


「俺、付き合ってる人いるんです」


なんだか話がよく見えない。


「それなら話早くない？本物の彼女に頼めばいいじゃない」

「…それはできないんです。
付き合ってること言えない相手で。
すみません、Aさんにもこれ以上は言えなくて」


付き合ってること言えない相手。


もしかして…不倫……とか？


藤ヶ谷くんが禁断の恋！人妻との恋！


「…似合う」

「え？」

「あ、いえ。なんでもないです。
でも…私にそんな大役はちょっと難しいかなあ」

「どうして？俺はむしろAさんしかいないって思ってます。
一人の生活楽しんでて理想的です」

「でも……」

「もちろんタダで、とは言いません」


藤ヶ谷くんがまた私をじっと見つめる。


「キスミーのユウタ」

「え？」

「好きなんですよね？」

「う、うん」

「彼今度舞台やりますよね？」

「…うん」

そのために徳を積むキャンペーン中なんです。

「俺、その舞台の関係者が昔からの知り合いで。
コネでチケットもらえ」

「やります」

「早！」

「やらせてください！完璧な彼女役を！」


こうして。


私と藤ヶ谷くんは、その取り引き先の上司の前で彼氏と彼女のフリをすることになった。


決戦は再来週の金曜日。





・





家に帰ってきた私は、はあ、って大きなため息をついた。

なんだかよくわからない展開。

ユウタのキミ恋は、結局そんな二人がくっつく話だったけど。

藤ヶ谷くんは『絶対にそうならない相手』として、私を選んだんだ。


ユウタが表紙の雑誌が目に入る。

経緯はともかく、ユウタに会いに行けるんだ。



「あ、そうだ。携帯充電しないと」

充電器につなぐと、インスタにDMがきていた。

誰だろう、と思ったら。


『今日は投稿ないんですか？こないだ教えた魚介系の店どうだったか感想聞きたかったなー』


よくラーメンの情報を交換しあってる、キタミツさんからだった。

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