ロンリーオンリーパラダイス

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Aちゃんから、爆モテ後輩の彼女のフリをしているうちに、その人を本気で好きになったって言われた時は。

内心ショックだったけど、友達として応援できるかなってその時はまだ思ってた。


「馬鹿みたいな話なんだけど」

「うん」

「後輩のこと、好きになっちゃったみたいで」

「……」

「あ、わかってるんだよ。彼女いることも、ただのフリだってことも。
そもそも歳もいくつ離れてるんだって話だし、」

「馬鹿みたいだなんて一ミリも思わねーけど」

「そう、かな」


「誰かを好きになるのに、理由なんていらなくね？」


そうなんだよな。

気づいたら考えてたり。

会いたいって思ったり。

もっと近づきたくなったり。



理由なんて、ないんだ。



Aちゃんが社員旅行に行くって言ってた日の夜。

電話したのは、気になってたから。

爆モテ後輩の彼女のフリをやめるって言ってた話どうなったかなって。

ラー友として？できることあるかもって、その時は思ってた。


けど、電話に出たAちゃんは何か様子が変だった。


「みっくん……」


泣きそうな声。

いや、泣いてる？


「んあ？どした？」


後輩と何かあったのか？


「みっくん、助けて」


次に聞こえた受話器越しでもわかる切羽詰まった声に、息を飲んだ。


「え？！ちょ、Aちゃん？」


「今ね」


そこでぷつ、って通話が切れた。


「おい！もしもし！Aちゃん？！」

急いでかけ直したけど電源が切れたみたいで繋がらない。

社内で嫌がらせされてるって言ってたのを思い出す。

もしかして今日も何かされた？


手の平にじんわり嫌な汗。


「くっそ、どこ泊まってるか聞いときゃよかった」


箱根の旅館、てことしかわからない。

ネットで調べて出たとこに片っ端から電話して、Aちゃんの会社の社員のフリして泊まってないか聞いていく。


12、3件目で当たったのは、運がいい方だったと思う。

今から向かったら日付変わるな、と思ったけど、俺は躊躇わずに車のキーをつかんだ。


エンジンをかけながら、思わず苦笑い。



俺、必死じゃん。

やべー、これ本気のやつじゃね？


友達とかラー友とか。

そんなんじゃこんな必死にならねーよ。




Aちゃんが彼女の振りをやめるなら。

俺ももうやめる。

ラー友だとか、自分の気持ちごまかすのやめる。



箱根に着くまで。


そんなことを考えて、いた。







『My precious one』…END…

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