【立海】私はただ席替えをしただけです（3）【テニスの王子様】

笑顔は大事 ページ5

柳先輩に連行されるがまま待たせてしまったことを他の選手の皆さんに謝り倒して、なんとか許しを得たところで今度は気怠そうに欠伸をしながらキャップをいじっている越前くんに話しかける。

彼も私と同じ迷惑をかけた身であるとはいえ、正直いってこの一件で一番お世話になったのは紛うことなき彼、越前くんだ。


「越前くん、さっきはマジでありがとう！！ 君は命の恩人だよ」

「別に……自分のためにやったことだし」

「いやいや、それでも助けてもらったことには変わりないからさ」


普段の部活と同じノリでバシバシと力強く越前くんの背中を叩くと、彼は嫌そうに顔を顰めながら「ちょ、痛いんだけど」と文句を垂らした。……しまった、彼はこういうのは苦手なタチだったか。


「じゃ、試合がんばれよ少年！ 遠巻きに見てるからねー」

「……なんか、腹立つんだけど」


ここぞとばかりに年上ヅラをしたせいか、越前くんは嫌そうに顰めた表情は変えないまま捨て台詞を吐いてコートの方に向かった。

……でも、なんとなくだけど彼とは仲良くなれるような気がするな。越前くんは私のことあんまり好んでなさそうだけど。うん、なんか、そんな気がする。


「──さて、私も仕事しますか！」


自分を鼓舞するように声を出して、私も越前くんと同じように自分の担当するコートの方へと向かっていった。


☆


「ゲームセット！ ウォンバイ切原、スコア──」


私の担当するコートの一つである赤也と桃城くんとの試合が無事に終わりを迎えたところで、私はすぐさま彼らにタオルなどを手渡した。
激闘の末に勝ったのは赤也だったけど、二人ともやはりさすがは全国レベル。試合は最初から最後まで目が離せないような展開ばかりで、私も思わず目が奪われてしまった。

……ああ、この合宿に来てよかった。マネージャーになってよかった！！
改めて深くそう感じたと共に、これからもたくさんこのような試合を見ることができるのかと思うと、どうしようもなく心が踊った。


「お疲れさま、二人とも。いい試合だった！」

「……お、おう。さんきゅ、」

「サンキューな、水野！」


肩を揺らしながら余裕のない表情でタオルを受け取る赤也とは対照的に、大量の汗をかきながらも笑顔でこちらにそう受け答え、愛想よくタオルを受け取った桃城くん。彼はきっとメンタルが人一倍鍛えられているのだろう。

スポーツとはそもそも疲れることが大前提だ。赤也に幻滅したなんて酷なことは言わないが、桃城くんという人間への印象がかなり良いものに変わっていったのは確かだと思った。

同い年の安心感→←悪気はないんです

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