囁きと語弊 ページ43
先輩は「あともう一つあるよ」とだけ言って、私の耳元にそっと唇を寄せる。私もなんだなんだとそれに耳を傾けると、先輩は困ったような声音で小さく囁いた。
「君がいると、どうやら赤也のラフプレーを意識的に抑えることができるみたいでね。これは俺たちのためにもなるけど、なにより彼のためになることだと思うんだ」
幸村先輩はすぐにこちらから顔をはなして、「どうか俺たちを助けると思って引き受けてくれないかな」と頭を下げる。
慌てて「ちょ、とりあえず一旦頭上げてください」と言ってそれを制止しようとすると、先輩は何も言わずにそっと顔を上げた。
もともと私は帰宅部で時間だけは有り余っていたので、それを断る理由はまずない。それに私は普段から先輩方にはお世話になっているから、尚更それを断りたくはない。
オマケにマネージャーになったら、好きなだけこの学校の試合を見られるときた。
良条件な上に自分にとっても相手にとってもメリットのある、言うなればまさにWIN-WINな頼みを断るわけがない。
本命は試合観戦みたいなところもあるが、常日頃の恩返し的な意味も込めて、快くそれを承諾しようとしたその刹那。……ちょっとした事件は起きた。
「そうだぞ水野。マネージャーなんて肩書きは軽く受け止めればいいし、なんなら合宿行けばお前の好きなイケメンが沢山見られるぜい」
さて、ここで問題です。ジャジャン。
有難いことに丸井先輩はこちらを激励しようとかけてくれたのであろう何気ないこの言葉。一体なにがいけなかったのでしょうか?
……正解は
「は!? 水野、アンタまさか め、めんくいってやつか? あれもこれも全部それが狙いなのかよ!」
「は?」
「な、なんだと! たるんどる!! そんな不純な理由で合宿に挑むなど……」
「は!?」
「Aのバカー、信じてたのにー」
「仁王先輩は意味のわからん演技するのやめてください!!」
正解は、語弊に語弊を重ねたようなまさに語弊オブザ語弊な「合宿に行けばお前の好きなイケメンがたくさん見られるぜい」という彼の妙な言い回しでした。
それじゃあ私がまるで大のイケメン好きの面食いみたいじゃないか。
たしかに恐れ多くて人の顔に優劣つけることはできないと言ったし、顔がかっこいい人はああだこうだという話は丸井先輩としたけど、ちょっとあまりにも語弊でしかないというか。
「ま、丸井先輩も変なこと言わないでください!!」
湧き出てくる感情のままに丸井先輩を小突くも、先輩は特に何とも思ってない様子で「はは、悪りぃ悪りぃ」とだけ言って小さく笑った。
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いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……! 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています! (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます!夢主さん、ついにマネージャーですね!楽しみです! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです! 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽`)/ コメントありがとうございました! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして!いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽`*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしだ | 作成日時:2018年7月21日 18時