謎のサービス、そして勝利 ページ40
力強く打つと共に不可解な変化をしながら、勢いよく相手方のコートへと飛んでいくボール。ボールはそのまま拾われることなく相手方のコートに落ちて、そのまま後方に跳ねた。……サービス・エースだ。
その瞬間、わぁっとテニスコート付近が湧き上がったのがわかった。「キャー!」と切原のサービスに感動する人もいれば、静かにそのまま試合をじっと見続ける人もいる。
当の私はというと、まさかの打球に目を丸くしていた。
「今のが……なんだっけ。なっくる?」
「ナックルサーブね。私も友達から聞いただけだから詳しくは知らないけど、指を立ててボールを握ってトスを上げるから、特殊な回転がかかって切原くん以外はどこに飛ぶか予測できないんだって」
「へ、へえ。とんでもないレシーバーごろし……」
とんでもないサーブを打ちまくる切原を見ていると、思わず不思議と相手方に同情しそうになってくる。
「にしても切原くん、今日はなんだかいつもより抑えてるなぁ」
「え、これで?」
「う、うん。私が言える立場でもないけど、普段は結構ラフプレーが目立ちがちで」
「あー……」
内心「切原っぽいな」と失礼なことを考えたのは内緒にして、私は静かに頷いて彼女に理解の意を示す。隣の彼女はコートに目をやると、次第に満面の笑みを顔に浮かべた。
「あ、そうこう言ってるうちに勝った。やっぱり切原くんは強いなぁ」
彼達の魅せた試合に恍惚とした様子の彼女。それに対して「うん、そうだね」と落ち着いた様子を装ってはみたけど、かくいう私も内心ものすごく奮い立っていた。
試合中は怒涛すぎて感情を抱く暇もないくらいだったけど、今になってふつふつと興奮してくるのがわかる。
立海テニス部の試合って、こんなに盛り上がりを見せるものなんだ。今までこの場へ向かうのを懸念していたことに、私は深く後悔した。この試合、見ていてものすごく楽しい。
一人で静かに余韻に浸っていると、なんと今日の練習試合はこれでおしまいらしく続々とテニスコートの周りにいた人たちがこの場から去っていって、気がつけばコート付近にいるのは私一人だけになっていた。
私的にはめちゃくちゃ早く来たつもりだったけど、たしかに私が来た時には既に人だかりが恐ろしいほどできていたし、もしかしたら既に練習試合が始まってからだいぶ経っていたのかもしれない。
結局もう一つの楽しみであったはずの幸村先輩の試合は見れずじまい。最後まで上手くいかない展開に「あー」と落胆しつつ、私はしぶしぶ荷物を取ろうと教室の方へと向かっていったのだった。
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いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……! 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています! (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます!夢主さん、ついにマネージャーですね!楽しみです! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです! 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽`)/ コメントありがとうございました! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして!いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽`*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしだ | 作成日時:2018年7月21日 18時