テニスコートの赤目のアイツ ページ38
練習試合当日までの二日間は、それはもう恐ろしいほどに何事も起きず平穏なまま過ぎていった。
強いて言うなら友達とお喋りをした、強いて言うなら丸井先輩にガムをもらいに行った、強いて言うなら真田先輩に廊下を走っていたところを注意された、強いて言うならジャッカル先輩に意味もなく「お前も大変だな」と同情された、強いて言うなら──
こんな調子で、昨日一昨日は今までとは打って変わって、急な展開も起こらない本当にいつも通りの日々だった。
呑気な私は「そんな日もあるよね、ラッキー」とどこまでも楽観的に考えていたのだけど、後に私はこれがいわゆる"嵐の前の静けさだった"ということに嫌でも気づかされることになる。
今思えば、これはまさに綺麗なフラグ……これから大きな出来事が起こりますよ、という露骨な前兆だったんだろう。
そして、あれから二日後の放課後。
切原にも言った通り"軽く試合を見る"つもりでテニスコートへと赴いた私は、方向音痴なのにも関わらずこのバカ広い校内で奇跡的に一度も迷わずにテニスコートへ訪れることができた。
それは言わずもがな、異常ともいえる圧倒的な人だかりがまず第一に目に飛び込んできたのが一番の理由なわけで。
異様な女子率、スポーツの試合のものとは思えないような甲高い歓声、アイドルのライブに参加しているかの如く熱狂的な盛り上がり。
それがこの学校の女子たちのプチ名物とも言える"テニス部による試合"が行なわれるテニスコートの周辺だと理解するのに、そう時間はかからなかった。
……うーん、ただただ人の数がやばい。
私は今からこの戦場に飛び込もうとしているのかと思うと、今でも自分で自分が信じられない。今までだったら、いくらテニスの試合観戦が好きでもここに来ることなんて絶対になかったのに。
平均よりは幾分か身長が高い私は、普段はいいこと無しなのにそれが珍しく武器になって、この人だかりの中でもなんとかテニスコートの中を見ることができた。
──そこで、私は目にする。
こちらから見て一番手前のテニスコートで行われていた、テニスの試合とは思えないような殺伐とした雰囲気から繰り広げられる激戦を。
「……切原?」
目を真っ赤に充血させた、隣の席のアイツの姿を。
405人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……! 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています! (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます!夢主さん、ついにマネージャーですね!楽しみです! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです! 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽`)/ コメントありがとうございました! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして!いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽`*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いしだ | 作成日時:2018年7月21日 18時