救世主か、それとも…… ページ30
「この……この、テスト前のこの雰囲気! 勉強をやらなくてはいけないというこの圧迫感! いや、学生の本業は勉強なんだから当たり前なんですけど! もう毎日がストレスパラダイスで……」
ああ、自分で話しておいてなんだけどテストのことを考えただけで頭が痛くなってきた。
勉強をするという行為が苦でしかない私にとって、この期間は本当に地獄だ。
前日なんてもってのほかで、この周りの人たちのピリピリした一触即発な雰囲気を目の当たりにすると、いかに自分が浮いた存在なのかがはっきりわかる。
ましてやここはあの立海だ。"智育"と"体育"のなんとかとかいう教育理念を掲げているくらいなのだから、少なくともそれなりに勉学への力も入れているわけで。
普段の授業でさえ付いていくのに疲れて睡眠をとることを選んでしまった私が、何故いまだにここにいることができているのか。よくよく考えてみたら全くもって謎だ。
「周りの人は何も悪くないから、完全に私個人の問題なんですけどね」
自分の頰をかきつつ、私は苦笑しながらそう言う。ちなみに自分の成績が悪いことは特に気にしていない。
「…………」
当の先輩は先程からずっと黙ってこちらの話に耳を傾けている。"もしかしたら私の馬鹿さに呆れたのかな"なんてぼんやりと考えていると、先輩は眼鏡を指で少しだけ押し上げて「こほん」と一つ咳払いをした。
「す、すみません。やっぱりこんな話するもんじゃないですよね、自分勝手な悩みだし──」
私はそれに反応して、思わず遮るように謝罪をする。どこを見ればいいのかわからずただひたすらに目を泳がせていると、先輩は「あ、いえ。そういうわけではなくて……」とすかさず私の発言を遮った。
「今回は少し時間的に厳しいかもしれませんが、もしかしたら次回の定期テストの際には貴方のお力になれるかもしれません」
力強く私の手を両手で包むように握って、先輩はまたあのまっすぐな視線をこちらに向ける。内心握られているという事実で頭がいっぱいだったが、先輩の目を見ているとそんなことを言ってもいられず。
「は、はい……?」と不本意ながらも少し震えてしまった声で聞き返すと、先輩は「後日またお話をしに伺います、それでは用事を思い出したので!!」とだけ言うとそのまま触れていた手を離す。
そして、柳生先輩にしては珍しく急いでいる様子で目の前をあくまでも早歩きで去って行き、取り残された私は「え……?」と首をかしげることしかできなかった。
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いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……! 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています! (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます!夢主さん、ついにマネージャーですね!楽しみです! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです! 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽`)/ コメントありがとうございました! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして!いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽`*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしだ | 作成日時:2018年7月21日 18時