摂取手段と迫る予鈴 ページ28
「はー、ほんとに美味しそうですね……！ 手作りのケーキなんて何年ぶりだろう」
「まさかそんなに喜んでもらえるとはな。水野は意外と甘党なんだな」
「そうですね。お菓子もスイーツも大好きですよ」
袋の中に入ったカップケーキに熱い視線を送りつつ、私は先輩の言葉に返事をする。
すると先輩はわざとなのかなんなのか「お前にも女子っぽいとこあんだな」などと失礼なことを抜かしてきたので、私は「うるせーですよ！」と軽くツッコミを入れておいた。
「そんなに気になるなら今この場で食べてもいいんだぜ？」
「えっ！？ でもここ廊下だし……いや、でもまぁいいのか……？？」
普段なら人が大勢いるはずの廊下だけど、今日は良い感じに人も少ないので、"せっかくだから"ということでお言葉に甘えることにした。事実かなりこの手作りのカップケーキのことが気になってたし。
もしかしたら先輩はそれに気づいてさりげなく気を遣ってくれたのかもしれない。面倒見がいいっていうのはこういうことを言うんだろうな。
「あー、でもカップケーキってどうやって食べればいいんでしょう？ 直食いするのも行儀悪いし」
袋からカップケーキを取り出しておいて言うのもなんだが、よくよく考えてみれば、私は今までカップケーキというものをしっかり食べたことがなかった。
フォークを使うのか、はたまた専用の何かがあるのか、もしくは直で食べるのか……思わず助けを求めると、先輩は「たしかに」と私と同じくよくわかっていない様子だった。
「というか、今何時だ？ もしかしなくても結構やばいんじゃ」
「え？ ……ああーっ！？ これはいかんです、あと数分で予鈴が鳴ります！！ 昼休みってこんなに短かったっけ！？」
先輩に指摘されたことで、私は半ば反射的に自分のスマートフォンに手を伸ばす。画面をつけると、そこに書いてあった数字はちょうど予鈴の2分前だった。
「どうりで人が少ないなって思ったんだよ……あれ！？ じゃあ私は今日何時に教室を出たんだ！？」
「よ、よくわからないけど落ち着け！！ とにかく早く戻るぞ！」
急いでカップケーキを袋の中に戻しつつ謎の展開に一人で混乱していると、先輩はそう言ってすぐさま私の腕に手を伸ばす。
そのまま私の腕を引いて、普段なら走らない廊下をお互いに全力で走っていった。
よく考えてみればここで腕を引いてもらう必要はなかったのではないかとも思うけど、この時の私と先輩はとにかく教室へ戻ろうと必死だったので、さながらハリウッド映画のように死に物狂いで教室へ駆けていくのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 405人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……！ 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (
レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています！ (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます！夢主さん、ついにマネージャーですね！楽しみです！ (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです！ 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽｀)/ コメントありがとうございました！ (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして！いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽｀*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いしだ | 作成日時：2018年7月21日 18時
