地産地消ができる人 ページ27
「よっ!!」
その日の昼休み。幸村先輩に会いに屋上へ赴こうとやけに人の少ない廊下を歩いていると、後ろから突然バシッと誰かに背中を叩かれた。しかも、爽やかな挨拶と共に。
私は挨拶を返そうと口を開いたけど、背中の衝撃が先行して思わず「いてっ」と思ったことをそのまま口に出してしまった。
声的には男子、そしてこんなことをするのは同級生上級生含めて限られた人間しかいない。
少なくとも親しい人間であることには変わりないと判断して、私は念のため敬語を使いつつ「なんですか、痛えですよ!」と文句を垂らしながら後ろを振り返る。
すると、そこにいたのは「へへ」と爽やかにはにかみながら片手でピースをする丸井先輩だった。
「丸井先輩! ……で、合ってますよね?」
「お、おう。急にどうしたんだよ」
「いや、なんでもないです! お気になさらず!!」
以前あったこともあって、私は思わず前のように本当は仁王先輩なのではないかと不必要な疑いをかける。
眉を顰めて怪訝そうにする先輩に「いやほんとなんでもないんで! すんません!」と雑な誤魔化しをして、今度は私が「というか、先輩から話しかけてくるなんて何かあったんですか? 」と先輩に質問をした。
「あっ、そういやすっかり忘れてたな。ほらこれ、せっかくだからお前に渡そうと思って」
「え、なんですか? 自家製のガム?」
「んなわけねえだろい。中身見てみろよ、きっと驚くぜ」
先輩に差し出されたのは、リボンなどで可愛らしくラッピングされた小さな巾着型の袋。
青白磁の袋に水浅葱のリボンという配色にただならぬ女子力を感じられずにはいられないが、一体中には何が入っているのか。
一応「じゃ、失礼しまーす」と断りをいれたあと、私は早速促された通りに水浅葱のリボンを解いて袋を開ける。
するとそこに収まっていたのは、見るだけでも食欲がそそられるとても美味しそうなカップケーキだった。
「うわ、めっちゃうまそう……もしかして、丸井先輩が作ったんですか?」
「まあな。趣味みたいなもんだから、たまにこうやって作って学校に持ってくるんだよ」
「ケーキ作りが趣味!? やりますね先輩、地産地消ができるタイプの食いしん坊でしたか」
「……お前の言い回しってたまによくわからない時があるよな」
素直に「そうですかね?」と答えると、先輩は笑いながら「感性が独特なのかな、芸術家とか向いてるんじゃね?」と適当にも思えることを言って、またひとつガムをふわりと口元で膨らませた。
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いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……! 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています! (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます!夢主さん、ついにマネージャーですね!楽しみです! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです! 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽`)/ コメントありがとうございました! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして!いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽`*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしだ | 作成日時:2018年7月21日 18時