単純な人間にペテン ページ15
例によって開始した私の仁王先輩による攻防戦、第1ラウンド。
時は昼休み。幸村先輩に会うつもりで屋上へ訪れた私は、静まり返った屋上を見て視覚的に誰もいないと判断し、そのままいつものベンチにどかりと豪快に座って「はぁ……」と大きなため息を一つこぼす。
"誰もいない"という思いから気の緩みが出ていたのか、私の脚は全開、両腕を大きく広げたまま背もたれに乗せ、とても思春期女子のものとは思えないような親父臭いかつ迷惑なリラックスの仕方を無意識に披露していた。……あの人が潜んでいるとはつゆ知らず。
「随分と豪快な座り方じゃの」
そう言って口元を押さえくつくつと笑いながら登場したのは、今回の私の対戦相手、仁王先輩こと仁王雅治推定15歳。
過去の私なら、この時点でまず「どこから出てきたんだ」とさぞ心から驚いていたことだろう。
しかし、今の私には仁王先輩と出会ったことにより多少の悪戯への耐性がついていたので、「こ、ここ、こんにちは!!!」とあくまでも動揺せず平常心を保って冷静に挨拶をした。
そう、あくまでも冷静に。最初のどもりは別に動揺していたとかじゃなくて、ただ口が回らなかっただけだ。誰がなんと言おうとそうです。
「呑気に挨拶をしてくれているところ悪いんじゃが……ちょうど今お前さんが座っているそのベンチ、ついさっきまで虫の死骸が置いてあったぞ」
「ギャーーーッ!?!」
1ミリたりとも予想していなかったまさかの衝撃の告白に、私は思わずベンチから飛ぶように立ち上がった。
「ちょ、そういうのはもっと早く言ってくださいよ!!! 絶対スカートについた、もうお嫁に行けない!!」
私は死ぬ気で自分のスカートをパタパタと靡かせて、スカートについているであろうソレをなんとか取ろうと奮闘する。
だめだ、心臓がバクバクいってる。未だ嘗てこんなにも嫌な方向で鼓動が高鳴ったことがあっただろうか。いいや、ない。あるわけがない。
すると、こちらは例のブツをスカートから取ろうと必死だというのに、仁王先輩は呑気に欠伸をしながら
「まぁまぁ、落ち着きんしゃい。自分のスカートとベンチを見てみろ」
と言って、私の後ろのベンチを力なく指差した。
頭にハテナマークを浮かべつつも彼の指先の向く方向を見てみると、なんとそこには彼の言っていた虫の死骸の姿なんて一つもなかった。
……ま、まさか。
嫌な予感を感じ取りつつも恐る恐る自分のスカートを触ってみると、そこには異物感があるわけでもなく、ただサラサラとした触り心地の良い布の感触だけが永遠と続いていた。
──ざ、惨敗だ。
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いしだ(プロフ) - アルテミスさん» アルテミスさん、二度目のコメントありがとうございます……! 続編の方でも変わらず頑張って行きますので、何卒よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月19日 21時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
アルテミス(プロフ) - 続編楽しみにしています! (2018年8月19日 21時) (レス) id: 2cc54b766f (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - 返信わざわざありがとうございます!夢主さん、ついにマネージャーですね!楽しみです! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - ユッキーさん» はじめまして。そう言っていただけてとても嬉しいです! 応援ありがとうございます、これからも自分のペースではありますが頑張っていきますねヽ(´▽`)/ コメントありがとうございました! (2018年8月17日 20時) (レス) id: 92a349b8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - はじめまして!いつも、とても楽しく読ませてもらってます。応援しているので、これからも頑張ってください(*´▽`*) (2018年8月17日 2時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしだ | 作成日時:2018年7月21日 18時