【ツイステ】平凡少女は恋をされているらしい

対価はなーに？ ページ45

魔獣縮小事件から一夜明け、いつも通り学校に向かっていた時のこと。



「Aさん、おはようございます」

『え？アズール？おはよう。珍しいね』



メインストリートで、相変わらず胡散臭い微笑みを浮かべるアズールに出くわした。


アズールは私より早く教室に行くことが多いようで、私の日直以外でアズールと朝会うことはほとんどない。



「いえ、偶然ではなく、Aさんを待っていたんです」

『え？』

「対価、まだだったでしょう？」

『あ。そういえばそうだね』



指摘され、グリムを戻す薬を作る際にアズールに対価を払うことを約束していたのを思い出す。


あれから色々あったからなー……チーズケーキとか、クルーウェル先生への言い訳とか、チーズケーキとか。



『対価何にするか決まったの？』

「ええ。こちらを」



アズールがユニーク魔法を使い、出したのは黄金に輝く契約書。


そこには文字が羅列されている。



『契約書……ってあんまり好きじゃないんだけど』



契約書には堅苦しいイメージがあり、なんだか賢い人しか触れてはいけない大事なもののような気がする。


大人だけの世界の物、っていうか。


前世の記憶があるとはいえ、前世も今も成人していない私にとって契約書にサインをするのは抵抗がある。


前世だと契約って大体大金が動く時だもんなぁ。



「そんなに緊張なさらなくても、ただの紙だと思えばいいんですよ」

『本当にただの紙、で済めばいいんだけどね。何とか口頭だけで済ませられない？』

「いくらAさんといえどそれは困りますね」

『だよねー……』



アズールにとって対価を払う、つまり契約をする、だもんなー。


仕方ない、か。


助かったのは事実だし。



『放課後、モストロラウンジで契約してもいい？』

「ええ、もちろん。ではお待ちしております」



にこやかに去っていくアズールを見つめ、私は1人、溜め息をついた。

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