幻想郷【sn】 (ページ13)

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幻想郷　13 ページ13

そうだ。分かる訳がない。

だって俺は小さな小さな妖だった。

人間の姿なんて一度も見たことがないあの人は、俺のことなんて分からない。

kj「戻れます」
　「そっか。良かった」

安心したように微笑む優しい顔。

あの頃のまま変わっていない。

あの人は、あの人の今の生活がある。それを邪魔しちゃいけない。

こうして自分の目で見れただけでも良かった。

…帰ろう、何も言わないで来たから阿部ちゃんたちも心配する。

踵を返し少し歩いた所で後ろを振り返ると、そこには既に誰もいなかった。

：：：

天狗の力なのか。

同じ道のはずなのに鳥居に戻るまで、行きの倍は時間がかかった。

案内してくれた天狗と同じ？鳥居の横に佇んでこちらを見つめている。

kj「これで良かったんかな…」

問いかけた言葉に返事はない。

そのまま鳥居をくぐって、また振り返った。

天狗は鳥居の下に居た。

　「何度も考えただろう。だから時間がかかったのだ」
kj「…」
　「後ろ髪を引かれる思いでここまで戻ってきた。それが答えなんじゃないのか」
kj「…」
　「また来るがよい。その時は自分であそこに向かえ」

空気に溶けるように天狗は消えた。

さっくんが言ってた“天狗は物知りでお節介で頑固”

今度会った時にはこう伝えよう。

“天狗は物知りでお節介で頑固で、それでいて凄く優しい”