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少し落ち着こう、と立ち上がってスタジオ全体を見回す。
普段はわいわいがやがやうるさくて、スタッフさんやろふまおメンバーがいるせいでなんだか狭く感じていたけど、誰もいない今はがらんどうのスタジオ。
いつもとは違う空虚な空間に寂しさを感じてこぼれるため息。別に子供じゃないから、閉じ込められたことに対しての恐怖心とかは無いけれど。
あれ、でも待って?今さっきの心細さがすぐに吹き飛ぶのが自分でも分かる。
がちゃんって何?私がスタジオに入ってちょっとした時にがちゃんって音がして…多分、それから開かなくなったんだと思うけど…
普通なら、スタジオに入ってドアを閉めた瞬間にがちゃんって音が鳴るものじゃない?そんな時間差でがちゃんなんて音鳴ることある?
しかも、誰もいないのにスタジオが鍵かかってないこともおかしい。あれ?これもしかして、誰かが意図的に私の事閉じ込めた?
立て付けの悪いドアなんて、外側から強引に鍵を閉めたら開かなくなるに決まってる。でもろふまおの企画だとしてもそんな炎上しそうなことするかな?
前言撤回。恐怖心しか浮かばない。
いつぞやの心霊回でも、霊感が強いから気をつけて、なんて強く言われたほどなのに。
結構本当に怖くなってきて、このことをツイートでもして気を紛らわそうと思いスマホを起動させると、充電があと3%しかない。
嘘でしょ?さっきスタッフさんとのLINE確認した時、80%はあった気がするんだけど。
モバイルバッテリーも2本録りだから、と思って油断して持ってきていないし。そろそろガチのやつかと思い始めてきてしまった。
しかも、無駄に鏡張りな壁が怖さを倍増させる。ドッキリであって欲しいってここまで思ったのは初めてかもしれない。
もう3%でもいいや!!!とりあえず誰かに連絡しよう!!怖いから!!と、スマホを再び起動させて、LINEのアプリに映る。
ろふまおのグループLINEから最後に発言した適当な人に通話をかける。誰か見てないけど、誰でもいいから人の温もりがほしい!!!
着信音が響く。なんかもう恐怖心超えて生理的な涙が出てきちゃったし。誰か出て欲しい、ほんとに。そう思った時、着信音は少しだけ入る雑音ともしもし、という声に変わった。
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作者名:きゅーぽん | 作成日時:2023年8月20日 19時