生まれ変わっ…え？平安？２【呪術廻戦】

陸拾捌 ページ36

そうして始まる争奪戦。ある偵察型の術式を持つ術師の術式越しに、羂索はその様子を眺める。

御三家の一つと名高い宵薙家は今年も豊作らしい。試合開始の合図と共に走り出す嫡男やら傍系の男やらを眺め、羂索はそんな感想を抱く。

勝つのはこの男か、と予想した時、戦況は刹那の内に一転し、戦いに望んでいた者達はいつの間にかある女の手の上へと転がされていた。



(────まさか！！)



術師の術式越しに見えたのは、純黒の彼岸花が咲き誇る花畑。そしてその中に立つ───白髪の女。


あの少女は駒にはならなかったのだ！己の術式を利用し、結界無しで領域を展開できる呪いの王と同等の位置に立っているのだ！


一瞬術式の映像が途切れたかと思えば、次の瞬間、映像に映ったのは死屍累々の上に立つ麗しい美女。それは妖艶に笑うでもなく、ただただ無表情で数々の骸を見つめていた。


嗚呼、なんてことだ。あんなもの、呪いの王の再来と言っても過言ではない。ただの女が、両面宿儺の座っていた玉座に腰を下ろすなど有り得ない。有り得ていいはずが無い。



『宵薙家次期当主は私、宵薙Aです』



堂々とそう言った姿は、彼女の存在を否定していた者達を一瞬で黙らせる。その荘厳さには、既に上に立つ者としての気配が溢れていた。



羂索は思う。素晴らしい、と。たかが女でありながら、幾人もの呪術師の頂点へと君臨したその姿は、正に太陽の如き不死鳥。


不死鳥・宵薙A。後に伝説と謳われる彼女の背を見た時から、羂索の心は嫌という程に惹き付けられていた。


これがこの男なりの、恋だとでも言うのだろうか。



目的のものを探し出した羂索の脳裏には、あの夜地面に倒れ伏し絶望していた宵薙Aの姿が焼き付いていた。

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