生まれ変わっ…え？平安？２【呪術廻戦】

伍拾参 ページ19

私の名前は千代。16つのしがない町娘でございます。

ある町で茶屋を営んでいる父と同じく茶屋で働く母を持つ私ですが、ある日素敵な友人が出来ました。
その御方、Aさんは男性に襲われかけている私を助けて下さった心優しく強かな女性です。眉美秀麗、才色兼備。そんな言葉が似合う方でした。

父曰く、その銀糸の髪を持つ女性は不死鳥という名を持ち、悪いものを祓ってくださる山住みのお方だそうで、我が町も不死鳥様に守っていただけているのだと。

後日町でお見かけし、差し上げようと心に決めた宝物の自鳴琴という美しい音を奏でる物を贈れば、私と面布をお付けしている男性の言葉に押され、困ったように、でも少し嬉しそうに受け取ってくださいました。

その日から私とAさんの交流は始まったと思います。

Aさんは私の茶屋の常連様のようで、参る頻度は半年に数回程でした。でも来る度に私と楽しそうに閑談してくださいますし、仲の良いお友達になれたと思います。
私が遠くの町の殿方へ嫁入りする事が決まった際は、寂しいな、と眉を下げて笑っていました。僅かな表情の変化でさえも美しく、私はその時大層見惚れてしまったのを覚えています。


そんなある日、私は懐妊しました。

身に覚えのない妊娠に、私は酷く取り乱しました。嫁入り前だというのに他の殿方と同衾など、する筈がありません。
然し町の知人や友人、祖父母や親戚は、私が不貞な女だと私の言葉に耳を傾けませんでした。
父と母は私の言葉を唯一信じてくださり、不死鳥様にご相談しよう、と私へそう言いました。

でも私はそれを拒絶しました。大切な友人であるAさんに、そんな事相談したくありません。あの御方の中の私は、汚れのない存在であって欲しかったのです。
子供は何故か、懐妊して数日で出産し、そして直ぐに息絶えました。でも胎児はまだ生きているようで……いくら身に覚えがないとはいえ、自分の子供を気味悪く感じた私は、いずれにせよ母親失格であったと思います。


ある雨の日、私は知り合いや親戚の強い風当たりから、子の亡骸を抱えて逃げました。
只管に道を歩き、もうここが何処かも分かりませんでした。

そんな時、額の縫ったような跡が印象的な殿方が、私に声をかけたのです。


「お嬢さん、行く宛てが無いなら私の寺で身を休めませんか？」


何もかもに絶望していた私は、その言葉に縋るように頷きました。
これが一番の過ちであるとも知らずに。

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