15話 ページ16
「ねえ、三郎」
「・・・・何」
翌日。頭痛も冷やしたらすっかり治り、夕飯の食材を買いに三郎と店への道を歩いている。
そして三郎に、私がずうっと聞きたかった事を聞いてみた。
ずっと、不思議に思っていた事。
「三郎ってさ、小さい頃の記憶・・・ある?」
「幼い時?・・・・あるっちゃあるよ。でも、あんまり思い出さないようにしてるかな」
「なんで?」
「あんまり、良い記憶じゃないから」
「そっか。・・・私ね、小さい頃の記憶が全く無いんだ」
一瞬、三郎の目に靄がかかったような気がした。
綺麗な純色が、灰がちになっているように見える。
「キオクソウシツ、って奴なのかな」
へへ、と苦笑いをするが三郎は真顔のままだ。
「・・・・かもね」
静かに言い放つと、こちらに背を向けてしまった。
明らかに不審な態度で、ムッと来る。
「っ、三郎!何その態度」
三郎の手首を掴んで無理矢理こちらを向かせると、三郎の瞳が揺れている。さっきとは違って、瞳の虹彩が消え入りそうな太陽に照らされ、思わず見とれてしまいそうな色。
「僕は、Aを傷つけたくないんだ」
その言葉を聞いた刹那、視界が暗くなった。
そして、ふんわりと鼻に広がる、暖かい家の匂い。
三郎に抱き締められているんだ、と分かった。
少し恥ずかしいけれど、震え気味の兄の肩を見て、私は背中に手を回した。
「・・・・A」
耳辺りで聞こえる、少し高くて落ち着いた声。
それはまるで、私が感じていた孤独感をかきけしてくれた様な声だった。
お前は独りじゃない、と言ってくれたみたいだ。
その安心感からか、思わず瞼が下がってしまった。
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アミ - この作品、すごく面白かったです!!更新頑張ってください! (2021年4月8日 10時) (レス) id: ba379c9f27 (このIDを非表示/違反報告)
十鞠 - 続きが楽しみです!!三郎君尊過ぎませんか、、?ちょっと、三郎君刺した奴狩ってきます。 (2019年8月8日 1時) (レス) id: fb05fdae18 (このIDを非表示/違反報告)
カヨ林檎(プロフ) - 水無月碧音さん» ご指摘ありがとうございます!恥ずかしい間違いをしてしまいました(-_-;)只今修正致しました。今後ともよろしくお願いします(*^^*) (2019年5月25日 20時) (レス) id: d998e82556 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - 設定の欄、二郎くんは17歳ですよ!^^;応援してます! (2019年5月25日 16時) (レス) id: 9308ec7c9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kayo3925/
作成日時:2019年5月23日 23時